おでん『いちこう』深秋のふたり飲み

movie_kid+blues2010-11-19

まだ木枯らしが吹くほどでもないが、寒いね、と感じ始めた頃合いで「そろそろ赤羽・丸健水産どうですか?」とメールをもらっては「はい、賛成!」と声を大にして言いたくなる。丸健水産とは、赤羽駅の東側に出て商店街の一角小さいながらもアーケードになった市場の奥の方にあるおでん種専門店。自家製の魚すり身のおでん種屋さんで、店売りのおでんコーナーが充実、市場の道ばたにテーブルを持ち出していて、ワンカップで立ち飲み出来るのだ。
飲み友達、I藤さんと息はぴったりこの週末におでんで一杯が決定した。
しかし、平日仕事終わってから赤羽に駆けつけるのでは、朝の早い市場の丸健水産の営業時間に間に合わないと判明し、考え込んだ。東京の場合、何故かおでん屋さんは、店を構えた途端に高級指向になるのが気に入らない。魚のすり身は、いいものほど高価で奥深いとは理解しているけれど、たかだかおでんだし庶民感覚でさらりと旨いおでんを出してくれるようなお店はないかなとネットをバラバラ見てもなんだかなのお店ばかり。
でも、な〜んかひっかかるなぁ、あっ、神保町の、、、、『いちこう』だ。かなり以前、もう10年以上も前だが、食べた事があった。奇しくもその頃、仕事の関係があったI藤さんと来ていたのだ。

↑おでんには、迷いなく、燗酒しかないでしょう。

↑関西の呼び名との違いで、おでん種は名前と現物とのギャップが時々ある。メニューを見ながらメモ用紙に食べたいものを客が書いてお願いする方式なので、頼みやすい。
神保町の交差点から、ほんのひとつ裏にある『いちこう』は、場所柄にして明るい繁華街ではないので店構えもひっそりとしている。ただ、中に入ると地元の仕事帰りの人達でわいわい盛り上がっている。古本屋や出版社、本関係の業界の人達が多く集まっている地域だからか、自分もその端くれの仕事をしているので、その空気が妙に馴染む気がする。変な乱れ方をしている人がいない。
頭も身体も、ツメの先まで、おでんおでんとなっていたので、飲む方もビールではおでんに申し訳ない、最初から日本酒の燗酒で始まりだ。おやじさんとおばさんのお二人で営み、ほぼ満員のお客さんにてんてこ舞い。I藤さんも僕も関西出身で、地元の牛すじ肉と醤油味のこってり系のおでん「関東炊き」を食べて育ったが、東京風のおでんも好きなのだ。汁が白いシャツに飛んでもシミにならないくらいのごくごく薄い色のだし汁に具材の旨味がしっかりとけ込んでいてその香りもいいのだ。燗酒が、くいくい進むし話も盛り上がる。

↑店のおやじさんが、たびたびの注文にひたすら捌くの頑張っていた。食べるカワハギはこれだ! と、ばかりに見せてくれた現物。

↑たっぷりの生きもで、惜しげもなく身に付けて食べると何も言えない。
そうか、お刺身もあるんだ。シメサバ、カワハギ、アジが本日のお刺身。とにもかくにもさば好きなので、シメサバを頼んだが隣の一人飲みのおじさんのが最後の一皿だった。いいです、いいです、ひとり飲み優先ですよ。「寒くなって来たこの時期なら、カワハギもいいよ」店のおやじさんの言葉に二つ返事でお願いした。生キモたっぷりで、身と一緒に食べると、これは旨い。肝の旨味とぷりぷりの身が、こたえられない。
「今の時期は、カワハギもシメサバも毎日築地に行っているからやってるよ」と言われたら、早々にシメサバ食べに来ないとね。

↑二人なのでちゃんと二等分に包丁入れてくれる優しさがうれしい。二人だと種類も沢山食べられるのがありがたい。

↑難敵「球磨焼酎」のイメージを覆された、飲みやすく旨い球磨焼酎を飲ませる古くこの地で営んで来た伝統の居酒屋。代替わりした今も独特の雰囲気がお店のなかに残っているようだ。
さて、第二弾のおでんも堪能してお銚子の本数も増えて来たと思ったら、それなりの時間になっていた。出来たら、もう一軒、近くの名物居酒屋『兵六』に行きたいと思っていた。残念だが、提灯の明かりが落とされていたので、趣向が変わるが、今日まだ飲んでないビールをのみにベルギービールの『ブラッセルズ』に行った。

↑ベルギーの生ビール、多分、グラスの名前のだと思う。ブラウン系のものはコクがあり、もうひとつはアルコール度数が高くどしんと来る。共に、香りが本当にいい。

↑ピクルス、オリーブ、サラミ、つまんで飲めばまだまだ、どんどんビールが進む

↑ニシンのマリネ。独特、ハーブと香辛料で外国の息吹を感じる。醤油文化と暫しの別れ。

↑瓶ビールもさすがはベルギー産、やはり、ブラウン系が旨いな。
半分立ち飲みの三階まである小さく狭いお店だ。ベルギーから直送の生ビールも4種類、瓶のものは有名な「シメイ」やら、沢山の種類がある。少々、値段が高めなのだが香り高いベルギービールは旨いな。せっかく、おでんと燗酒で暖まったのに、また冷やしてどうよ、思うかもしれないが、冷え冷えのビールでなくアルコール度数も高くコクもあるので、ゆっくり、じっくり飲み続けられるのだ。
日本酒、燗酒から始まって、ブラウン系のベルギービールに最後は、軽やかな白生ビールで終わった、深秋のふたり飲みだった。

↑さて、最後に選んだ白生ビール。薄く白濁とした軽やかさが、終わりにはにぴったりだった。JRお茶の水駅までの坂道を、その軽やかな気分のまま帰路についた。