上野・アメ横ガード下、人の流れを眺めながら


春に求職中の状態になって、のんびりしていたら夏も峠を越えそうだが、身辺に変化はない。すでに人生後半戦の我が身にとって、時の経つのは早いものだ。
11年ぶりに関東に台風が上陸するなど、今年は、東日本以北で台風の当たり年かもしれない。これから秋に向かって、幾つか台風が向かってきそうな不穏な勢いがある。
自分の状況をかえりみれば、現在も求職の応募書類は出していながら、先方の会社が夏期休暇のため対応が遅れるという旨、連絡を待っている状態。仕事もせずに気楽かもしれないが、どこにも進めない状態でどうにも途方にくれている。
稼ぎがなくても、毎日、飯を食わなければ生きていけないし、たまには、酒も飲まなきゃ、心の平常も保てない。週末、土日には、家でも外でも酒はやっぱり飲んでいる。しかし、収入がなくなれば、財布の口を緩めっぱなしとはいかない。

↑JR御徒町駅の先に、朝から営業の銭湯『燕湯』があるのを見つけている。ひとっ風呂入ってからアメ横での一杯は、魅力的なコース。すでに経験済みなのだが、本日は、腹も減りすぎていて余裕もなく、ここに直行して生ビールごくごく。
有楽町で映画を観たからといって、銀座のビアホールやドイツの輸入生ビールを公園レストランのオープンテラスで、飲んではいられない(ついこの前まで、飲んでいたけれど)。
安くてたっぷり飲めて、酔っ払えるホッピーを飲むことが、必然的に多くなった。生活圏である上野駅周辺では、ほとんど酒を飲むことがなかったが、アメ横のど真ん中、山手線などJRのガード下『やきとり文楽』が、お気に入りとなった。

↑線路の並ぶ位置的には、上野東京ラインが真上を走る『文楽』。しかし、山手線でも京浜東北線でも、基本はひっきりなしに上り下りに電車は走り、ガード下全体に響き渡る電車の音で、飲んでいる人々は、いつの間にか叫ぶほどに声を張り上げて連れと盛り上がっている。時には、たまたま隣同士と意気投合してるのも見かける。
古くから有名な焼きトンの『大統領』の向かいの店といえば、だいたい見当がつくだろうか。自身が愛用するオリジナルブランドのジーパンの店『HINOYA』もあるが、近年、昼飲み通りとしても進化をするエリアだ。
もともと、外で飲むのをこよなく愛しているので、アメ横の歩道にはみ出しているビールケース重ねのテーブルに、ググッときた。
だいたい、こんな狭い人通りの多いところで、テーブルひとつ道にはみ出して、通行妨害も甚だしい。けれど、昼間から何を食べて、飲んでるのとチョッピリ羨ましそうに一別というより、ナメるように睨みながら歩き見ていたが一転して、客になったらそんな通行人の目などもろともせず、逆に「いいだろう」と、ニンマリ顔に出てしまうほど、くつろいで飲んでいるのだから自分でも驚く。
店名にある通り、やきとりがメインと思いきや牛もつ煮込みも、牛豚のもつ焼きもある。今まで焼きトン屋に、焼き鳥があるのを何となく嫌っていたのだが、そんなことゴチャゴチャ言ってないで、旨いもの食べて飲みなよって感じで、ここではすっかり心変わりした。

↑こんにゃく、豆腐入りで白味噌系、煮込みの王道の味。かつて、上京したばかりの頃、初めて食べて感動した西荻窪『戎』のモツ煮込みを、彷彿させるといったら、褒めすぎか。

↑ホッピーの焼酎もたっぷりに、濃い目を楽しめる。
最初に食べる牛もつ煮込みは、好みの王道・白味噌系で、こんにゃく、豆腐入りで、ネギがたっぷりかかっている。煮込み時間が足りなかったのか物足りないほど、あっさりの時もあるが、長時間煮込まれたものは、モツの脂もとろけて濃厚だ。
夏の暑い昼下がり、生ビールごくごくから始めてしまったが、その後は、ホッピー1本に、氷入り(焼酎)中3つのパターンで飲み進める。
焼き物は、鳥もも串焼きをからしみそ2本セットと、鳥ナンコツ塩を1本追加する。このからしみそが、強烈に辛い。でも、この激辛が、癖になるようで、辛いのにだんだん付ける量が増えてしまうのが、何とも不思議。
サイドメニューもいろいろあって、塩キャベツは、生のキャベツに塩、ごま油をふりかけたシンプルなもの。本日は、ポテトサラダにすることに。にんにく味噌や、もちろん、タレ焼きもあるが、すでにホッピー1本コースも終わりそうなので、焼き物追加は諦めることにした。

↑入門編として、からしみそにハマっている。辛くてたっぷりのからしみそは、追加の牛豚もつ焼きでも、野菜につけてもいける。

↑シンプルな塩キャベツもいいのだが、追加の焼き物をあきらめたので、ポテトサラダにした。ホッピーに合うんだなぁ、これが。
アメ横の通り、目の前を歩く人々は、見るからに金持ちも、貧乏人もなく、男も女も、老いも若きも子供さえいて、まさにごった煮で、おおむね日本人庶民の見本市だ。それに、外国人観光客が加わり、白人に、アジア系の黄色や茶色、黒人もちらほら、人種のるつぼとなり歩き流れてゆく。当たり前のように隣で、フランス人アベックが、やきとりの串に食らいついていたりするのだ。
何より、店の従業員が、女将さんを除き全員がアジア系の人たちで、暑さに負けずにキビキビと動きはいい。
頭上では、いつも山手線、京浜東北線上野東京ラインも加わって、ゴーゴーと電車が行き交い、食堂や飲み屋だけでなく、食材、衣服、雑貨と、人が集って蠢いている街並みの中で飲んでいると、酒だけでなく喧騒に酔ってくるようだ。
こんなに雑多に人々が行き交う流れの横に身を置いていると、したたかに生きるパワーが感じられて、呆然としながらも心地よくなってくる。
自分は、これからどこに転がってゆくのだろうと数ヶ月考え続けて、何とも思ったようにはいかないと思い始めていた。とはいえ、やみくもに土俵際まで追い込まれてると思い悩む必要もなく、少しは、開き直る気持ちも芽生えくるのだった。(8月21日飲)

↑隣の席が空いたので、チャンスとばかりにテーブルからの写真を撮ってみた。たくさん食べてはいないが、勘定は2千円台の後半、だいたい銀座、日比谷の半分ほどで済んでしまう。旨くて、安いことは、いいことなのだ。蓮の花の最盛期は過ぎているが、まだ、咲いているのもあるだろう、不忍池を散歩してから帰ることにしよう。