ドアーズ/まぼろしの世界

movie_kid2010-11-13

「すべては滅びても、詩と歌は残る」
この映画のキャッチコピー、60年代後半アメリカのロックバンド『ドアーズ』のジム・モリソンの言葉だ。フランシス・フォード・コッポラの映画『地獄の黙示録』その導入に、さながら地獄への誘いの様な曲『THE END』で、ドアーズというバンドを知った。すでに若くして亡くなっていたのでデビューアルバム『ドアーズ/ハートに火をつけて』聞いていたくらいだった。
40年もたって、今更だろうと思いながらもその存在の吸引力で、観ない訳にはいかないなと感じた。当時の映像のみで構成されているこの映画は、通常のドキュメンタリー映画の形式をとらないで、今まさに目の前を疾走しているような錯覚になるほどの臨場感だった。全ての映像と映像を繋ぐ、ジョニー・デップのナレーションの良さもあるし、ベトナム戦争の泥沼にあるアメリカの激動の時代と若者の意識と文化が絡み合った、単なるバンドの物語にとどまらない広がりと重みがあった。
ジム・モリソンなくしては、このバンドがなかったろう。彼を受けとめるバンドなくしてもこれだけのパワーをもった音楽もなかったのだろう。劇中でも指摘していた、ベースのない楽器構成が、独特の浮遊感をもって独自の音楽が生まれていた。時には、麻薬とアルコールで、逸脱してしまうジム・モリソンの歌詞が、暗示の様でも叫びでもあり時代を超えて生きている我々を挑発させ、深く心に入り込んでくるように感じるのだ。
当時のフィルムで構成されるので、現在のデジタル技術の高さが、映画としての完成度にかなり貢献していると思うが、それ以上にメッセージをもった強い映画だった。