四谷・鈴伝、いい気分で新宿ゴールデン街へ

今勤めている事務所が千代田区麹町で、四谷駅をはさんで反対側の四谷三丁目に長年仕事して来たS社がある。出版社も今は大変な時期で(そのあおりで自分もそこを離れる事になったのだが)経費節減で会社を引っ越しする事になったそうだ。いまだに支払われていない原稿料のある身にとっては、頑張ってくれとしか言いようがないのだが、会社から希望退職者を募られたり働くスタッフのみんなはやっぱり大変だろうなと心配もしていた。

↑四谷・酒屋の鈴伝。スタンディングコーナーは入り口は違うが、もちろん中ではレジで繋がっている。立ち飲みファンには、有名どころ。

週末、早く終わったので都合が合えば飲んで話を聞いてみようと編集長に電話したら、地方出張中だった。ならばひとり飲み、四谷駅すぐの鈴伝酒店、スタンディング・コーナーに足が向いた。先代から全国の地酒の販売に力を注いで来た酒屋さんが、店先で飲ませる(角打って言うのだっけ)これぞ元祖ってな感じの立ち飲みどころ。おばちゃんが作るお袋の味的なおつまみもあり、純米吟醸や搾りたて旬のものも旨い地酒を格安の値段で飲める。何たって酒屋だから話は早いし飲んで旨ければ買って帰る人もいる。
もちろん、現金その場払いで自分で買って、自分の場所を作りそこに運ぶオーソドックスの立ち飲み流だ。おばちゃん二人で切り盛りするので、サービスなどと言うものを期待してはいけないのだ。

↑残り物のシメサバ、たこ、マグロ三点盛りが角にあって見つけられず、悔しいことに後から来たおやじが目ざとく見つけていた。いやいや、そんな事はないよサラダ、大根煮物は、満足できる、良い酒のアテである。
高知の酒・南、ポテトサラダ、大根の煮物、しめて1,150円。デーブルに運ぼうとすると
「お一人のお客さんは、デーブルじゃない所にして」
最初から、おばちゃんのキツいお言葉。はいはい、わかりましたよとぐるりを見るとカウンターのおじさん達ちょっと詰めてくれたのでそこに入る事にした。
火入れをしていない生っぽい酒の口あたりだが、重い感じではなくさらっとフルーティーだ。ビールもなしに、一気に日本酒だが、こんな口当たりがよく旨口だったら問題はない。するりするりと喉に吸い込まれる。次は、普段あまり飲まない濁り酒。石川の菊姫(500円)と仕込み水(100円)をもらい、チェイサーして口を洗いながら飲む事にした。とろりとした口あたりと意外に辛く感じる味、ドスンと来るボディーの強さがいい。早くも、2杯目にして酔いが立ちのぼってくる。仕込み水がいい働きをしてくれる。

にごり酒は、小さい四合瓶ですらなかなか一本買う気にはならない。菊姫のにごりを仕込み水とチェイサーしながら飲むのは、我ながら褒めたい選択だった。

↑三杯飲まないと気が済まないのは、悪い習慣かもしれない。ただ、二杯でやめるには、後悔が残り心に良くないよな。
ここで終わってもいいくらいの満足度だが、やっぱり、3杯は飲みたい。石川・手取川(450円)とじゃこてんでもう少し楽しんだ。純粋に仕事帰りの一杯を堪能しようと来ている人達ばかりで、静かに落ち着いて飲んでいる。
いい日本酒の酔いは、意外に重く早く感じる。ビールや焼酎ではない強い日本酒、独特の感じだ。
ここで帰ってもいいと思ったが、週末の8時30分、やっぱり帰るにはまだ早過ぎる。新宿に行こう。よし、ゴールデン街だ。ここにも長ーく通っているお店がある。20代後半頃かな色々と方々に飲みに行く中で新宿ゴールデン街は、ちょっと異質の近寄りがたいような雰囲気が前からあった。ともかく覗いてみると、どこか閉鎖的な感じが居心地良くなかった。こんなもんかいなと思っていたら、仕事でお世話になった作家先生に連れて行ってもらったのが『ダンさん』だった。
ママさん、大阪の出身で関西なまりが意外に心地よく、全体的に開放的で客のみんなが自然体で飲んでいる。ゴールデン街、こんなお店もあるのねとそれからその作家先生の角瓶のおもり、補充をするために飲みに通った。その内に、この店でかみさんと出会ってしまったりなんて事もあり、たまに行っても暖かく迎えてくれる。今週祝日の前日に、28周年記念でお店のパーティーの招待状来ていたが、行かなかったので近々顔を出しておこうかなとも思っていた。

↑この看板は、花園神社側の寂しい側でないとなかった。
ゴールデン街もなんだか、歳をとって身長が縮んだようなこじんまりして来たみたい。隣の歌舞伎町に飲み込まれる感じに雰囲気の違う店も入り口の方に出来ているためかもしれないし、オカマのお姐さん達も客引きに立たなくなり、危うい感じもなく、ちょっと寂しい。

↑『ダンさん』前の場所は通りが違い、一階だった。酔っぱらって来るとつい前の店の方に行きそうになる。今は、2階だが、穴蔵のような居心地の良さは変わっていない。

↑20数年、自分のでない名前を書き続けていた角瓶。今でも自分で書く時は作家先生を大きくプラス自分を小さく書く。

↑料理を作るケンさんは、俳優で今は絵を描く人だ。P映画に主演したし、ラグビーの3番プロップでチームに入っていたのでラグビー関係のお客さんも多い。
『ダンさん』ここでは角瓶一筋、教えを乞うた作家先生からの引き続きだ。今は流行で炭酸も置いているが、前は水だけだった。角瓶のウィスキーは、いつ飲んでも相変わらず一杯目は辛く、ベベさんと旦那のケンさん、お二人のコンビのお店が楽しく、いつもついつい飲み過ぎてしまう。
その飲み過ぎ感が、やっぱりゴールデン街かな。

↑映画関係や作家さん、飲んだくれと喧嘩と文化のゴールデン街。今は、懐かしさを感じる新宿ゴールデン街か。