北千住『おおはし』、でっかい金目鯛の塩焼きにく〜らくら

仕事復帰になる(たぶん)前の、ちょっとした待ち状態の週後半だった。話をもらったまま、何も動いていない空白の状態で、どうなることかの不安がつのって来る。その現場は、すでに忙しさのピークに差し掛かってる様子なので、身を置いてしまうと、突然、嵐の中に放り込まれることになるのだろうか。
まぁ、考えてもはじまらない気もするので、週末の金曜日、北千住『おおはし』へ行くことにした。結局、事務所勤めの時と何一つかわらないで飲みに行ってるのではと言われそうだが、返す言葉もない。飲んで、憂さを晴らすのとはちょっと違って、純粋に料理を楽しみたい、活気ある店の喧噪に身をゆだねたい、おやじさんと言葉を交わしたいといったところでお店に足が向くのだ。とか、いいわけがましいことを言ってしまうのも酒飲みの悪い癖か。

↑日中は、晴れてあたたかかったが日が落ちると同時に冷え込んで来る。銭湯でひとっ風呂浴びるとほかほかでさっぱりと酒が飲めるのだが、出遅れてしまいすでに満席だった北千住『おおはし』

まだ、6時前というのに満席で2人連れの2組が待っていた。もっと早く来ることもできたが、銭湯でひと風呂浴びて来たので出遅れてしまった。しかし、良くしたものですぐにカウンターのひとり客が帰ろうとしている。おやじさんが、出入り口で椅子に座って待っているこちらにつかつかと来て、両方の2人連れに一席しか空かないのでいいですかと、聞くなり僕を抱きかかえるようにしてカウンターの席に連れて行ってくれた。申し訳ないが、こんなときはひとり飲みの勝ちなのだ。
「今日は、まだ、何でもありますよ!」と、おやじさんは威勢よく言ってくれる。「金目鯛の塩焼き、いっておきますか!」もう、気が早いんだから。でも、お願いします。

↑少しだが前回のボトルが残っていた。飲みきる前に、新しいボトルを目の前にポンと出してくれた。気が早くて、テンポも速い、おやじさんと若旦那。

カマスのたたきは、皮付きで旨味が濃い。カワハギは、釣りの番組でやっているほど、関東の海で釣れはじめた旬の魚だ。さっと湯通しした肝と一緒に食べると口一杯に旨味が広がる。

そんなこと言っているうちに、目の前には金宮焼酎セットと肉豆腐が湯気を上げている。お腹もすいて来たところだし、肉豆腐と頬張りクイクイと焼酎炭酸割りを飲む。肉豆腐を食べ終えた皿を置くか置かないかの時「さあ、刺身は何にしましょう」若旦那(おやじさんの息子)が、絶妙のタイミングで言ってくれる。
実は、肉豆腐を食べながら、メニューの短冊をにらみ検討を重ねていたのだった。肝付のカワハギにかますのたたき、これに決めていた。カワハギはポン酢で、カマスは皮付きをしょうが生姜醤油だった。いい選択だ。

↑なるほど、一番最初に金目鯛の塩焼きいきますかと聞いた意味がわかった。これだけ大きいと焼くのに時間がかかるのだ。大きいからこそ、脂があって焼いても身がしっとりとしてパサパサしない。

金目鯛の塩焼きが、目の前に出されくらくらした。何とも、でっかい切り身だ。皮がパリパリにその下の身の脂が、じゅくじゅく音をたててお汁をしたたらせている。
金目鯛の塩焼きは、珍しい。サイズも大きく、脂がのっていないと焼いてもあまり美味しいとは思えないが、この金目鯛は理想そのものだ。身の厚みが、半端でないので食べごたえがある。

↑無心に金目鯛を食べて飲みして、ふと一息入れた。本当に美味しいなと思い、残りの腹身のところを食べる前にもう一枚、撮りたくなった(残骸で申し訳ない)

↑貝類も、あれば必ず食べたくなる。何度も言ってしまうが、赤貝の香りが残っているから旨いんだよな。

メニューの短冊で気になっていたのが、まぐろの目玉の煮物。大きい金目鯛が、かなりお腹にきいたが、まだまだ食べられる。甘辛の煮汁のゼラチンを食べたくなってたのんだが、残念、品切れである。それでは、生ものに戻って赤貝の刺身にしよう。それにしても、7時前なのにどんどん客が入って来ては「いま、むりだから」と、かわいそうに門前払い状態になっている。
僕が飲みはじめる前からいる、長っ尻の客もかなりいる。隣の2人組も、金宮焼酎をすでに1本空けているので一杯づつでもらう焼酎にして、まだ飲んでいる。こちらが、〆のオムレツを食べてお勘定にしてもまだ、この2人組は3杯目を所望しておやじさんに瓶1本にした方が良かったんではないのと言われていた。
その2人連れの1人が、僕に「先輩、刺身の穂シソを、パシッとするのカッコよかったですね」なんて帰り際に言って来たが、待っている人や門前払いの客がいるのに、長居をするのなんてまったくカッコ悪いぜと、言い返してやりたくなった。
けれど、ぐっとこらえた。腹が減って早く飲みたくても、じっと待ってる人がいるのだから、さっと飲んで次の人に快く譲ることがなぜできないのか? ホント、たのみますよ。

↑しめに食べる、オムレツ。全体の食べた品数が少ないのは、やっぱり、金目鯛の塩焼きが、ひたすらに立派だったからだな。