名物は、煮込みだけではない『大はし』


北千住『大はし』での、飲み方はどうすればいいのと“びん”さんから書き込みをいただいた。
誰が言い出したのか知らないが、東京三大煮込みの中に入っているとかで、老舗の居酒屋として有名店であり人気の店だ。その証拠に、連日開店からたいそうな混みようで、ガラス戸をあけるなり「いま、いっぱいだから無理だよ」と入るまでもなく門前返しをくらってしまう客を見る事も多い。馴れていないと敷居が高く感じるのも無理はないだろう。

↑2年前ぐらいから店内写真撮影は、禁止になった。それまでは、数年、自分の食べた物を記録として、撮り続けていただけに残念だ。
『大はし』で飲みはじめて、かれこれ15年以上は経っていて、お気に入りと言ってしまえばまさにそれに尽きる。
前回に続き『大はし』ネタになってしまうが、あらためて基本的なところを少し書いてみることにする。
確実に飲みたければ、開店16時30分の少し前に行くことにつきるが、平日では仕事や用事もあるからそうもいかない(土日は、定休)。開店してすぐ満席になるとそれからみんないっせいに飲みはじめたっぷり1時間以上はいるだろうから、次の狙い目は18時前あたりだろう。なんとか仕事を終わらせて来る人たちのピークになるのが19時過ぎで、その時間に来て飲めなかった人も多いと思う。
では、遅く来ればいいかというと、品切れになる料理が多くなり満足できないことにもなりかねない。
ちょっとしたタイミングに左右される事が多いのだが、とにかく店内に入って5席ぐらいある待ち人用の椅子に座る事を心がけるしかない。後は、少々の我慢。
“びん”さんは、酎ハイがお好きだと書いていたが、注文しても酎ハイがグラスで出てくる訳ではない。まず、受け皿付きのコップに金宮焼酎の25度を一杯もらい、そして、梅風味のシロップを少し入れてくれる。それを、炭酸で割って飲みたいと言えば、グラスと氷、炭酸(追加90円かな)を出してくれるので自分で調合することになる。
“レモンサワー”が飲みたければ、梅シロップを断って、レモン下さいと言えば、半きりレモンを(これも有料)出してくれるので、自分でレモンを絞る。
2人なら、断然、軽く飲み切ってしまえるのでボトルをお勧めする。しっかり飲むつもりならひとりでも、ボトルの方がスマートに飲める。残しても1カ月キープしてもらえるので、無理をして1本飲む必要もない。ただ、1カ月以内に残したボトルを飲みに来られなかったら、ちょっともったいないけれど。
しかし、店内に入ってボトル棚を見れば、その本数の多さに客の多くは焼酎をボトルで飲んでいるのだとわかるはず。自分のボトルが、1カ月の限定だが店の中にあるのは、何となく嬉しい。(次に来て、ボトルを飲んでしまい新しく入れてとエンドレスになる事は、往々にしてあるけれど。それが『大はし』の流儀でもある)
さて、名物の牛煮込みは、肉だけ、肉と豆腐、豆腐だけの3種類のチョイスがある。もちろんお好み次第だが、甘辛い味付けの豆腐も旨いし、肉も食べたいので「肉豆腐」と注文する。時たま、言葉に出して頼まなくても出てくるくらい毎回必ず最初に、これを食べている。
それから、魚貝の刺身を2〜3種類食べ、魚の照り焼き、もずくやカキ酢などサッパリ系も一品食べ、締めにオムレツを食べるのがパターンになっている。できるだけ、早い時間に来たいというのも、刺身類と照り焼きが食べたいからで、メニューにあって注文しても品切れだとつらい。揚げ物は、普段から食べない習慣にしているので含まれていないが、店のメニューにはちゃんとある。
刺身類は、ひとり飲み対応とでも言えばいいのか、値段もそこそこに一品の量が少ないので何種類か食べられるのも魚好きには嬉しいところだ。
刺身を多く頼むので、一回の舌代は、新しくボトルを入れて、だいたい5千円見当になる。
ちなみにカウンターで飲んでいると、皿や器が伝票替わりで、勘定を頼むとおやじさんが年季の入ったそろばんで神業のごとくサッサッと計算してくれる。若旦那の方は、さすがに電卓を使っているが、気風の良さが気持ちよく、おやじさんと共に粋である。地元でないと、少々荒れた言葉遣いに聞こえる時もあるかもしれないが、遥か昔の宿場町だったイメージを彷彿され歴史を感じるところでもある。
定番ものの安心した旨さと、魚貝類に限らず野菜や色んな食材の季節ごとの旬の味が、気軽に下町価格で楽しめるところが、お気に入りの大きな理由。だから、1年を通じて飲みに来てこそ、味わえる楽しみがあるのだ。