1ヶ月なんてほんの一瞬、ボトル期限切れ前に『おおはし』へ


8月いっぱいで事務所を退職して、9月に入ってから自分へのお疲れ様のつもりで『おおはし』のひとり飲みをした。明日は、もう10月だから、1ヶ月なんて早いものだ。そのあいだは『おおはし』に行っていなかったので、飲み残したボトルも期限切れになる。やっぱり、もったいないよなと理由をつけて飲みに行こうか。

↑かつて、営業していた頃の『梅の湯』。『おおはし』で飲む前に、気が急くのをこらえながら、ひと風呂浴びた昔ながらの銭湯だ。今までありがとう、お疲れさまでした。

前回と同様で、銭湯に入ってから飲みに行くことにした。銭湯は『おおはし』に一番近い『梅の湯』にしよう、建物全体に古びてはいるが、趣のあるいい銭湯だ。ただ、江戸っ子好みのすごく熱い風呂には、まいってしまう。どうしても、そのままのお湯では熱すぎて水を出しながらうめて入るのだが、いったん首まで入ると水は止めるようにしている。そしたら、後からやって来たおじいさんに「今日は、熱くないかい」と、こちらの我慢を見こしてやさしく言ってくれたことがある。この銭湯では、熱くて入れるかどうかが、挨拶の一つになっていたのかもしれない。あまり人の入っていない湯をこんなに熱くしてどうするのと、笑ってしまうのだが、廃材も燃やしているようだし古いボイラーでそんな微妙な温度調整などできないのかもしれない。
『梅の湯』に入るのもかなり久しぶりで『おおはし』が、土曜日休業になるより前だから2、3年行っていない。営業しているのか不安になり、煙突に煙が出てるか気にしながら歩いていたが、あれれ、煙突がない。不安が、的中。建物はかろうじて残っているが、煙突がなくなり入り口をふさぐように廃材が高く積まれていた。『梅の湯』は『おおはし』とセットで15年も長くお世話になっていただけに思いもひとしおで、こうして古きよきものの灯りかりが消えて行くのだなぁ、と気分が滅入る。秋の夕暮れを、もう一つ先の『大黒湯』へとぼとぼ向かった。

↑6時を過ぎると、すぐに座れない可能性が高くなる。中で、座って待てないほど、入り口に人が溢れていると途方に暮れる。

あんまり早い時間に飲みに行くのも休職中の身分では、後ろめたさもあり(単に気分の問題で、飲むことになんらかわりはないだろうが)結局、店に入ったのは6時を過ぎていて、2人連れが2組も待っていた。先の2人が席に着いたあとで、次に席を立ったのがお1人様だったので、先に飲めることになった。
お待たせしましたと、おやじさんは矢継ぎ早に氷やコップ、焼酎はNEWボトルを出してきた。飲み残したボトルが見つからなかったのか、素早いおやじさんのタイミングに聞くことができなかったので、まあいいかと新しい焼酎を飲みはじめた。残ったボトルの期限が来るからと飲みに来た理由なんて、吹っ飛んでしまったな。
メニューをたのむまでもなく、おやじさんが肉豆腐にカンパチの刺身を持ってきて、おまけにすでに照り焼き焼いてますからという早さだった。隣の女性が、目を丸くして一連の早業に驚いて「なにも言わなくても、すっかり、用意されるんですね」と、思わず口に出した。

↑カウンターに座ると同時に、トントントンと用意された一式。

まだ早い時間にもかかわらず、みるみる、刺身類の売り切れが続出している。あじ刺身が終わりで、ボタンエビにしたらこれが旨かった。2尾で、480円は高価だが、とても大きくて頭のからをとると、頭の味噌の部分まで崩れずに一緒に残り身がしっかりとして新鮮なのがわかる。甘くねっとりとした身と味噌の味が相まって、うっとりしてくる。

↑もちろん、銀ダラ照り焼きはいつも旨い。そして、今日の目玉が、ボタンエビだった。

ヤリイカは、写真撮る前に箸をつけてしまった。酔っぱらって来た証拠だな。

子持ちヤリイカの酢味噌を食べる頃には、ボトルもすでに半分を飲んでしまっている。これは、ちょっと飲み過ぎだ。〆のオムレツを食べて終わりにしよう。
おやじさんにソロバンで、計算してもらっている時、最初に間違ってしまって申し訳なかったですね、と言う。何のことだろうと思ったら、別の客(たぶん魚好きは、同じだと思う)と人違いしたらしい。「前の残ったボトルをどうしてくれる」なんて無粋なことはいわない。「ボタンエビが、すごく美味しかったです」と言い残し、満員の客と、どんどんやってくる客とでごった返す店を後にした。

↑最後のオムレツにも、撮る前に箸が先に出てしまった。

↑さすがに、ひとり飲みで金宮焼酎このサイズを1本空けてしまうのは飲み過ぎだ。飲み残しを、これぐらいだとキープしてもらっても大丈夫かな。ごちそうさまでした。