師走の『おおはし』締めくくり

12月、師走に入ったすぐの頃に、年末は忙しいから今のうちに北千住『おおはし』の飲み納めをしておこうと飲みに行った。しかし、今年も残すところあと10日あまりと本当に押しつまってしまうとどうにも、また『おおはし』で飲みたくなってしまった。
このところとだいたいは土曜日に仕事があって、晩飯も食べそびれて事務所近くの築地界隈で居酒屋に行くことも何度かあったが、刺身にしろ煮物にしろひと品の量が多くて1、2品ほどで、空腹から一気に腹いっぱいになりほろ酔いになる前に、酒すらも飲めなくなってしまう。ひとり飲みにとっては、困ったものだった。

↑ガラス戸を透かして、待っている人がいっぱいだとのれんをくぐる前に愕然とする。
その点『おおはし』は、ひと品一人前の盛りで旨いものを少しずついろんなものが食べられる。ながく通ううちに、自分なりの組み立てが出来上がっていることもあるが、コース料理のように満足感がある。
悲しいことに、店内撮影が禁止されるようになったから食べた料理写真を掲載することもできないが、肉豆腐からはじめ刺身を2、3品、魚の照り焼き、菜の花からし合えなど野菜系、もずくや冬なら牡蠣やなまこの酢の物、そして、オムレツで締める。飲むのは、もちろん金宮焼酎のハイボール。梅シロップは、ほんの数的で自分好みの案配で調合する。
さすかに冬の寒さのなか店に入るまでは、氷を入れてハイボールを飲むなんて思っただけでぶるっと震えるが、店内に入ると不思議と飲めるのだ。飲ん兵衛たちの熱気と、おやじさん、息子さんの磨かれた接客に一瞬で包み込まれ、湯気の上がる肉豆腐を口に含めばはじける下町ハイボールがするりと喉を通ってゆく。
そう、これが飲みたかったんだと心から楽しめるのだった。
忙しかったこの週も、明日の土曜日もまだまだ自分の仕事は続くのだが、金曜日の今夜、どうしてもと事務所に無理を言ってこうして『おおはし』での今年の締めくくりで飲みに来て、年の瀬の押しつまった気分が徐々に高まって来た。
これだけ店内に沢山の人が飲みに集っているのだが、来週まだ一週間あるからか年末の挨拶やらが聞こえて来ない。
新しい客はどんどんやってきて「今は、無理だよぉー」と声が響いている。明日から年末最後の3連休で、半端でない混み方だ。駅から店に向かう途中で、席が空いているとは最初から思ってないが、この寒空で店に入りきれなかったら困るなと考えていたらだんだん足が速くなってしまった。
さて、新しく入れたボトルも半分ほど飲んでしまったので、勘定してもらう。おやじさんが年季の入った大型のそろばんで、目の前の積み上げた器を点検しながら計算してゆく。ぼそぼそと「今年は、これで〜」といいかけるも「奥さんによろしく!」と満面の笑みで送り出され、来週も最後の最後で飲みに来たいなぁーと思うのだった。(12月20日 飲)