パレルモ・シューティング

movie_kid2011-09-10

音楽と映像、どこを切り取ってもヴィム・ヴェンダースの映画だった。初期の頃は、決してわかりやすいと映画と思っていなかった。『ベルリン天使の歌』『夢の涯てまでも』あたりで、何となくヴェンダース監督らしさがわかって来て以来、映画がするりと自分の中に入って来るような気になった。アメリカに渡り映画を撮り始めて12年がたち、今回、ヨーロッパに戻り原点であるロードムーヴィーを撮ったのだ。
主人公のカメラマンは、自分の才能を確信しながらも、迷いを持っていた。車で、危うく事故を起こしそうな一瞬に死神の姿をカメラに捉えてしまう。それからというもの死神の影に追いかけられるようになり、撮影のために訪れたイタリアの古き美しい港町、パレルモで死神と対峙するまでにいたる。「死は、生を愛しているんだよ」と語りかける、死神に扮するデニス・ホッパーのどこか突き抜けてしまった様な演技が、圧巻。
終着であり、出発の母なる港町パレルモで『死』と向かい合い、人生に新たなる一歩を感じる映画だった。