蜂の旅人

movie_kid2014-01-23


悲劇ではなく、悲哀に満ちた初老の男が、娘の結婚を機に教師の職と家庭をすてて旅に出ます。父から受け継いだ養蜂の仕事で、まだ冬の気配が残る北イタリアから南へ花の咲く春を求めてトラックを走らせます。テオ・アンゲロプロス監督が、こんなパーソナルな男の映画を撮っているとは驚きました。かつては革命を戦ったとは言っても、老いてなお人生に迷うばかりで、悲哀ではあってもどこか滑稽で笑いも誘います。旅先での若い娘との出会いなど、たわい無ないおじさんの妄想の様でも、男と女のぶつかり合いにまで行き着くのはこの監督らしいのですが、どこかほっとさせるようないい具合に力の抜けた愛すべき映画でした。