ユリシーズの瞳

movie_kid2014-01-22


変な言い方になりますが、ハーヴェイ・カイテルが主演していることでテオ・アンゲロプロス監督の映画が、エンターテインメントになっていると思いました。アメリカ映画の中でも個性的な俳優であるハーヴェイ・カイテルが、ギリシャ系の映画監督Aに扮し、この半島で初めて撮られたと言われている幻の未現像のフィルム3巻を求めバルカン半島ギリシャから戦火のサラエボまで旅を続ける物語です。彼が、画面にいることで、寒々とした厳しい風景のなかでも、力強さやどこか華を感じることができます。
20世紀の “まなざし” といえる映画は、人間をとらえ、街を、自然を、社会を、戦争を、人の人生を見つめ続けて残してきました。その “まなざし” もこの世紀が変わる今、失われているのではないかと映画監督Aは強く問い続け、幻のフィルムを撮影した兄弟の時代を追体験しながら旅は続きます。
ユリシーズの瞳』は、映画が “まなざし” であると教えてくれた特別で大切な映画です。