生きつづけるロマンポルノ③

movie_kid2012-05-24

『赫い髪の女』監督:神代辰代
恋人たちは濡れた監督:神代辰代
『濡れた唇』監督:神代辰代

ロマンポルノ特集は、結局、神代辰巳監督の作品のみにブレイクしてしまった。もうちょっと観たくなった神代辰巳監督作品は、異常なほど吸引力がありパワフルだった。
紀州紀伊半島の端っこの海の町、芥川受賞作家・中上健二の原作を独特のタッチで描いている『赫い髪の女』は、かつて20代で観た時にも衝撃を受けた記憶はあるが、あまり細部までは覚えていなかった。卑猥でHなシーンは、結構、覚えていたりするものの全体的にあやふやになっていた。
男と女は、お互いの人生の欠落を相手に求めセックスによって充足するかに見え、決して埋めることのできない深淵に隔たれた関係に陥ってしまう。いらだつ男は、女を裏切り打ちのめされる女を見て、己をもまた傷つきずたずたになる。女は、そんな男にすがりつきながらもしたたかに揺れ動く。これは、ポルノなんだろうか? 切なすぎる。
全編を通して、憂歌団のブルースが流れ石橋蓮司宮下順子が濃密に男と女を演じていた。やっぱり、この歳になったことで、隅々まで堪能できたように感じる。男と女の格闘の末にやるせない命のうごめきがフィルムに焼き付けられた映画だった。
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政治的臭いがぷんぷんするのに、いっさいの直接的表現をしない『恋人たちは濡れた』独特の雰囲気と力を持った映画だった。
政治運動の末に若者たちに広がった白けたムードや気だるさの状況、空気感を見事に捉えていたが、過ぎ去った時代の古さを感じさせない。やるせなくて刹那的に生きる若者の姿を美化したり、スタイルだけの表現をしていないからだろうか。
70年代のあらゆる類似品のような演出の出発点のような神代監督のオリジナルを感じる。確信的に無名の役者を使うことで単なるスタイルではない純粋を感じた。
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神代辰巳監督の第2作目にあたり、記念すべき日活ロマンポルノのスタートとなった作品『濡れた唇』70年代の時代も色濃く、青春映画的な感覚が強かったが、ドキリとする濡れ場の表現などはまさにポルノ的であり、衝撃でもあった。
成り行きで殺人を犯してしまい、恋人同士の逃避行となるのだが、途中からカップルがふえて4人による絡み合いが、うまく理解できなかった。仲間と一緒に楽園を目指す風になるも、実は恋人の名前も知らない同士だったとドライなタッチで唐突に終わる。
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ポイントカードがもらえ、1作品についてひとつ判子を押してもらい10個たまると先着の数量限定で今回の特集上映『生きつづける ロマンポルノ』のポスターがもらえる。7個までいったが、ここで終了。
『赫い髪の女』などは、平日の午前中の上映にかかわらずほぼ満席の大盛況だった。3日にわたり映画館に足を運んだだけなので全体を把握していないし作品も33本中7本では観たうちに入らないかもしれないが、観に来てよかったというのが正直な感想。
女性専用席が設けられていた効果か、女性の観客もチラホラ見受けられたのも興味深かった。