ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

movie_kid2012-03-04


ニューヨークの9.11で、ビルの中にいた父を亡くした少年の喪失と再生の物語。この事件に、ひとつの切り口ではあるが真正面から向き合った素晴らしい映画だった。世の中が、理不尽に満ちていてあまりにも訳がわからないと主人公の少年の気持ちに寄り添って、ニューヨーク中を訪ね歩く冒険に一緒に出かけたような、せつない気分になった。アカデミー賞の助演男優にノミネートされたスウェーデン出身のマックス・フォン・シドーの演技にも痺れた。映画が捉えているニューヨークの街並が、行ったこともないのにニューヨークらしいニューヨークに見えるのは、イギリス出身の監督であるばかりでなく子供の目で見た街の感じ方まで盛り込まれていたからだろう。不完全であることが人そのものだが、そうであれ人はやっぱりいいなと思わせてくれる映画だった。