スリー・ディズ

movie_kid2011-10-02


ラッセル・クロウ主演で、無実の妻を脱獄させるアクション映画のように予告で見たが、監督がポール・ハギスだったので意外に思った。初監督作でアカデミー作品賞の『クラッシュ』と、2作目の『告白のとき』で、社会派の鋭く深い洞察で独自の作風の映画を送り出している監督が、アクションなのかと不思議に思った。
ラッセル・クロウのイメージで、マッチョなヒーローものかと思ったのが勘違いだった。いつ何時、幸せな家族を引き裂かれてしまうほど、もろさのなかで私たちは生活していると、社会の不完全さを描いていた。フランス映画のリメイクで、独特の雰囲気と監督の持つ考え方が色濃く反映された映画だ。
教師の夫は、妻の無実を全面的に信じるが、まっとうなことではなす術がなくなり、苦悩の末、誰もが間違っているとしか言いようがない決断をする。行動に移す中で、リーアム・ニーソン扮する脱獄王に接近して、教えを請い、一般社会人から逸脱することを求められるのだ。そうでない限り、妻を自由にすることはおろか子供も含め全員の死を意味すると語る、リーアム・ニーソンの説得力は凄い。
普通の男が、いかにしてプロをも出し抜き不完全な社会から妻を強奪し救い出せるのかを、3年前のことの発端から、3ヶ月前、3日前、実行当日と重いテーマを引きづりながら、ヒートアップして行くのだった。
ヒットさせたい映画会社と監督との間で、映画の方向性にギクシャクしてると感じるところもあるが、観ている方の受け取り方で評価が分かれるところだろう。