ミスター・ノー・バディー

movie_kid2011-05-15


めくるめくイマジネーション、軽く3本の映画分はあろうかと思うほどのシーンの数々。117歳の老人が語る何通りもの人生物語を瑞々しくも、楽しく悲しく語りきる。この監督、初めての映画「トト・ザ・ヒーロー」も、独特の語り口で軽やかに男の人生を語った映画だった。今回は、目の前の選択によって何通りもの変化し枝分かれする人生までもひっくるめて、時代も時空も交錯しながら目まぐるしくも歌いあげる、人生賛歌。
監督はベルギー出身、ヨーロッパの人ながら50年代あたりのアメリカンミュージックとカルチャーが好きなようで、影響されたものと独特の美意識とがうまい具合にブレンドし、表現された映像に目を見張る。自国のベルギービールの軽やかで香り高く、それでいて熟成されたうま味と同じような上質の映画だった。
終わった人たちの口々に出てきていた、わかりにくかったやあまりにも目まぐるしくて疲れたという感想もわからなくもないが、単純に色んな人生の話を、楽しめばいいのにと思ってしまう。わっはっはっと、映画の最後にその老人が自分の人生を笑い飛ばしているではないか。