トゥルー・グリット

movie_kid2011-03-26


これほど美しい映画もなかなかない。
コーエン兄弟は、濁りのない純真なまなざしで鋭く人間を見つめていて、何だかおかしく、そして、背筋も寒くゾクゾクさせてきた。そのコーエン兄弟の西部劇で、大きな期待以上の素晴らしい映画だった。思わず2週連続で観に行ったぐらい。
開拓の時代とはいえ、人の命のやりとりが日常的に平然と行われるなかで、まともに世間を渡って行くのは並大抵なことではない。度胸も才覚も問われる自然も厳しく荒々しい世界で、父を殺された若い女性が気丈に立ち向かって行く姿と保安官とは名ばかりの賞金稼ぎの荒くれた男が、人の命を何人も奪うなかで一つの大切な命を守ろうとする真の勇者でひらすら感動する。
助けようとする瀕死の少女と一緒に、夜を徹して馬で早駆けする大地の美しさに息をのみ、ただ、涙が流れてくる。古びない原作の力強さを、素晴らしくデザインされた映画になっていると感じた。それは、表面的なことだけでなく根底に流れる自然に対する敬意と人の真摯に生きようとすることに対する憧れと言えばいいのだろうか。
そのことが、美しい映画に繋がっているのだろう。