アンチクライスト

movie_kid2011-03-05


ブルーレイでの上映は、少し残念だがこんな問題な映画を上映して観れるのだから良しとするべきか。映画が始まる前に後ろの席で「テレビドラマはハッピーエンドばかりでつまらない、だから、映画を観に来る」と頼もしいことを話してる若い女性声がしてたので、この映画が終わってからどんな顔しているのかなと思いちらりと見るとあっけらかんと、いや、ぽかんとしていたというべきか。
ラース・フォン・トリアー監督の映画は、相変わらず観ているこちらさえ容赦なく追い込んでくる美しさと凶暴性があった。キリスト教の宗教的な土壌がないものにとっても激しく切り込んでくるのだから、西洋文化圏にとっては劇薬以外のなにものでもないだろう。日本人にとっては、ぼかしを入れてしまう文明度の低さを呪ってしまうところではあるが。
人間の女と男の本性に迫る勢いと、映像の美しさと空恐ろしさに全身痺れたように硬直するしかない。ウィレム・デフォーシャルロット・ゲンズブールの裸の体当たりの演技、その素肌感覚と痛みが、からだと心にまとわりついてくるようだった。その粘っこい感じが、かなりしつこく後々までも残ってしまう。観なければよかった的な思いもないわけではないが、監督が鬱に精神を病んでから撮りあげたこの映画、観客も心してかかる必要があったようだ。