ポンヌフの恋人

movie_kid2011-02-05


激しい映画だった。人生の歩きやすい道からずいぶんとそれ曲がって、きりきりと自らも追い込んで命の崖っぷちにいるような二人の出会い。おしゃれで華やかなパリの中心地、ポンヌフ橋が老朽化のため掛け換えの工事中の隙間に流れてきた二人が、お互いの苦しみのために相手を傷つけながらも人の持つ命の輝きを目映いばかりに放つ。
二十年前、この映画が封切られて観たときに、フランス・パリにも、労働者とそこからもドロップアウトしてしまう人たちがどこの都市とも同じようにいるんだなと驚いた。
当たり前の話だよね、おしゃれな人だけでは街は成り立たない。普通に市民生活していたら路上生活とは、かなり距離があるように思われがちだが、そんなに違いがあるわけではない。ちょっとしたきっかけで人は、思いも寄らぬ行動を取るし、純粋であればあるほどもろいものなのかもしれない。
監督のレオ・カラックスは、人間の闇に対して深く考え掘り下げて映画を撮っているようだ。その苦しみが深ければ深いほど、また、その一瞬がいっそう輝くと。
20年前、10年前、そして、今回デジタル・リメイク版のデジタルの上映だった。名作のデジタル化でまた映画館で観れるのはうれしい限りだし、技術も上がってきているがこの映画の場合、暗い夜のロケのシーンも多いなか、デジタルスキャンの設定がよくない。不鮮明であってよいのに無理矢理調子を上げても、闇が浅くなるばかり。自宅のテレビ用DVDではそうではすまないのだなと思うが、深い暗闇は、闇としての表現なのだからと不満が残った。
年齢を重ねて観てきた映画の一本で、当初からとそんなに感想が違わない。心の闇と人の輝きに関して、それぞれ年齢によって状況はいろいろでも、人の人生そのもののことで、普遍的なことだからだろう。