白いリボン

movie_kid2010-12-11

推理ものの範疇を超えているこの映画に対して、うかつに書けないと思った。まったく的外れな事を書いてしまいそうな気もしつつ、恐れずにひとつ書くと、神の存在を描いている恐ろしい映画だった。知識も信仰も持ち合わせていないので筋道たてて何か言える訳ではないけど、神の様な存在が直接的な表現や姿かたちではなくカメラの立ち位置やその物語の進む演出の中でわかるのだ。一見気がつかない積み重ねが映画の後半に突然、はっとする感じで存在を納得するのだ。何となく思っていた神のイメージとは違って、善ではなく悪とも違う、人間をまったく凌駕する存在として恐ろしさを感じるものだった。
世界大戦前夜のドイツ、小さな村の牧歌的な風景と人間の営みをモノクロームの映像で淡々と語る中で起こる事件が、そのコントラストの強い映像と共に観ているこちらに突き刺さってくる。
ミヒャエル・ハネケ監督の作品で観たのが『ピアニスト』だけだが、その作品の多くがただならぬものと聞き入っていた。今回の作品で2009年のカンヌ映画祭パルムドール栄冠に輝いた。その名声が集客したのかどうか、上映15分前には全席が完売されていた。
丁寧に事件を解明する作りではなくとも、ちゃんと論理的な説明がされていると監督は語っていたそうだがとてもそこまで辿り着く前に、こちらははっとする存在に心奪われ、震え上がらせられたのだ。その存在とは、人間の本質を暴くこの映画そのものなのかもしれない。