飲み友と行く『中央線ゴールデンコース』

『ひとり飲みブルース』看板にかかげているが、定期的に飲みに行く、いわゆる飲み友達が二人いる。一人はすでに登場したI藤さんだが、もう一人のK西さん、今は東京在住ではない。生まれも育ちも吉祥寺の人で、コピーライター業で長年広告を生業としていたが、一年ほど前に心機一転、和歌山県龍神村という山の中に移住してしまった。十代の頃からの飲み友達と言ったら問題あるが、その頃に知り合ってだんだんよく飲みに行くようになった、飲み友である。
知り合ってからは30年、月に一度か、二度のペースで飲み続けて20数年だから筋金入りと言ってもいいくらいだ。だから「和歌山の龍神村に行く」と、聞いた時は、かなり衝撃的だった。それも自分の出身の和歌山県だったので、よけいに驚いた。偶然と言えばそうなのだが、行ってしまうのではどうしようもないし、寂しくないと言えば嘘になるが、50歳も過ぎると人生いろいろなのだ。
自分の親の住む海南市からも100キロ以上も離れているけれど、正月は帰省もするし行き慣れている場所だから、今年一年間で、正月、春、夏と3度も会いに、いや、飲みに行っている。遠距離恋愛ならぬ、遠距離飲み友なのだ。
そのK西さんが、仕事、出張と言う事なのだろうか、東京に来た。何泊かするし、飲みにも行けるので帰って来たと言うべきか。実は、このブログを書くように進めてくれたのが、K西さんなのだ。ほとんど飲みに行く店のない山の中で、かつて自分が食って飲んだものを『ひとり飲みブルース』で見て、ひたすら「食いてぇー」と、思っていたらしい。今回、あれも食いたい、これも食いたい指数が上がりっぱなしだった。
一晩に、そんなに行ける訳がない所で必然的に『中央線ゴールデンコース』になった。

↑思い出横丁の入り口で待ち合わせも久しぶりだ。

↑ひさしぶりの客にも優しい『カブト』で、間に合ってよかったレバ串。
ここ数年、二人の間でお気に入りのスペシャルコースの事で、新宿・思い出横丁『カブト』から始まって、荻窪・立ち飲み『やき屋』そして、阿佐ヶ谷『たつや』この厳選の3店だ。
『カブト』は、もうおなじみのうなぎの串焼き。ちゃんとお店の人に和歌山のなんば焼き(これは激旨)のお土産を買ってくるほど『カブト』を愛してる人なのだ。その愛が実って、そろそろ時間的に危ない頃だがレバ串を食べる事が出来た。
電車で移動して荻窪・立ち飲み『やきや』。立ち飲みだから安いのだが、その安いのにもほどがあるほどなのだ。この店こそが、東京における正真正銘の『千ベロ』店で、最高のいか料理のお店。いかの刺身も焼きもほとんどのおつまみが150円なのだが、今回驚きの値上げで160円。知っている限り10年くらいの間で初めての値上げ、それも今時、10円ですよ。恐るべし。
いかのワタ和えのこの味、刺身の美しさ、塩辛の丁寧さ、いか大根の味の沁み方。安さはもとより、誰も真似が出来ない領域に達している。だから、詳しい場所なんてぜったい書かないもん。ひとつだけ難があると言えば、店のおばちゃんが恐いのだ。独特の恐さが、また、この店の味でもある。

↑この店の場所は、ぜったいに言いたくない。今回も危なくギリギリ入店だった。

↑立ち飲みの定番、ホッピーセット。

↑ワタ和えが合ってよかった。人気の逸品は、当たり前だが早くになくなる。

イカ刺し、ミミ刺し、ワタ和え。これが極めつけコンビ。ワタ和えと共に刺身を食べるのも旨いんだ、な。

↑ここらで、だいぶ酔いがまわって来たようだ。すまぬ、ピンぼけで、かつ、すでに食べかけのいかのナンコツ焼き。

↑K西さん「俺が食べるから」と、揚げ物食べないこちらを遠慮しながら頼んだゲソ揚げ。

↑この飴色のいか大根。味も心に沁みる味。

↑とてもこんなうす塩で、自分では塩辛は作れません。だから、凄い。
今度は、バスで移動。阿佐ヶ谷『たつや』は、閑静な住宅街の真ん中にある。銭湯とちょっとした商店、小さいスーパーがあるくらいで、駅から歩けば30分以上はゆうにかかる、飲み屋にしては超不便なところ。地元の人しか来ないだろうと思うのだが、意外に遠くからお客が来る不思議なお店。この店に行き出した頃は、K西さんは千葉の津田沼に住んでいたし、こちらも荒川区なのでエリアが違うし、帰りも大変だ。
この店は、魚だ。基本が小型の魚、白身系も青物も真鯛、石鯛、チヌ、メジナ・・・貝類でも何でも、その季節、築地で仕入れたもの一匹まるまるお刺身にして出してくれる。それも、1,330円の均一料金。高いようだがだいたいがどんなものでも3人前はある。そのたっぷりな量と目の前で捌く包丁さばきと鮮度で、魚食べた充実感がただ事ではないのだ。調子に乗って飲み過ぎて、翌朝、酒が残っていても夕べの『たつや』は旨かったと、心の底から思い返すほどに。

↑お通しが、殻付き生ガキ2個で一人前。これも、凄い。

↑今日の一押し、カンパチ。それ、と、頼むと捌いてくれた。いつも、アラをお土産にもらい、翌日のみそ汁に。今回は実家の吉祥寺に帰るK西さんのお持ち帰りに。
今回は、カンパチなのでもちろん一匹まるまるはあり得ないのだが、刺身の身の厚さも特徴で、ぷきぷき感も口一杯にひろがり、たまりません。ひとり飲みではさすがに一品でお腹いっぱいになり楽しみも半減だが、二人で来ると一品ずつ頼み、ちょうどいい感じ。寿司屋のようにタウンターだけで、東北出身の朴訥なマスター一人で切り盛りする隠れ家的お店。

↑これでもかの大きい切り身。これ一皿でも、持て余すほどの量に見えるが、食べ始めるとぺろりとなる旨さ。

白身のコチは、自家製ポン酢で。湯通しの皮が、いいのだ。写真は撮り忘れたのだが、K西さんの所望で厚揚げ焼きを食べた。よく食い、よく飲んだ。
10人も入れるのかどうかの小さいお店で、せっかく行って座れないのも問題だが、今の所そんな状況になった事がない。もっとお客さん来てくれないと新鮮な魚も食べれないのでこのお店は宣伝したいところ。手元に電話番号がないので今度行ったら、紹介してもいいか聞いておきます。
K西さんもちゃんとこの店にもお土産買っていた。魚好きの人以外は来れないお店で、魚好きにはたまらないお店なのだ。