リミット

movie_kid2010-11-23

よく出来ていた。徹底して、その状況を貫いていて創り上げた秀作と言える。映画にとって最大の味方となる、映画館の暗い空間をも利用してその世界観を表現していた。挑戦的にその狭き空間を舞台としながら、今時の携帯電話の持つパワーを最大限に利用している。
作り手は、自らの手段を狭めに狭めて、観客は誰も見た事のない狭い空間の一本の映画を目撃する事になり、同時に何万キロにも及ぶ現実の距離感を麻痺させる通信手段の魔力にもかかる。
イラク戦争におけるアメリカの立場と情勢をリアルに反映させていて、ニュースなんぞにはぜったい出て来ないその軍、民も問わず崖っぷち感も切実に迫って来る。舞台の制約に縛られない上質の舞台劇を見ている様に、持続する緊張感でぐいぐい引っ張られ、いつの間にか今を生きる自分の存在にまで思いが至り、涙まで滲んでくる。
即物的に刺激されると言うよりは、じんわり立ち上ってくる死の恐怖でヒッチコック的な正統派の息吹が感じられた。