ルイーサ

movie_kid2010-10-23

30秒ほどの映画の予告編、南米風タンゴ・ギターの曲と淡々と都会の中の老女姿を追う映像が流れる。とてもシンプルで力強く引きつけられた。ツッーと一筋の涙が流れる。結構、映画を観て泣く方(おいおいとではなく、涙が滲む程度ですよ)だけど、予告編で涙を流したのは珍しい、これは、観に行くしかない。
ルイーサ、60歳。アルゼンチン・ブエノスアイレスの大都会に住む、還暦のおばちゃん可愛がっていた猫が死に、30年勤めた霊園事務の仕事を解雇されどん底をなめる話。彼女には癒しきれない過去の深い傷があり、そこから一歩も出れないまま歳を重ねて来た浮き世離れな所があり、身に降りかかった不幸に子供じみた純真さがあった。
何が、あの予告編、この映画にそんなに力があったかと言えば、それは音楽だった。一見、主人公のおばちゃんに共感するものがそれほどないようだが、世代も地域も国境もやすやすと超えるだけの説得力のあるギターの音色が、シンプルで重い映像と混ざり合って、哀しみ、希望、おかしみ、人間の深い所の心情を表現しうる映画になっていた。
伝統的な南米音楽と言うより、アフリカ的パーカッションが入ったり若い人達によるワールドな新しい音のようにも感じられた。劇中にもストリートミュージシャンとして登場して、このおばちゃんと同じ絵のワンシーンになるのだが、違和感あるようでいてこの映画の全体のトーンを形作っているものとして、しっくりして来ておかしい。
渋谷の映画館、主人公がおばさんだけあって観に来ている人もなんだか、ご夫人の方々が多く見受けられた。但し、映画の方はおばさん限定ではなく、シンプルに力強く都会に暮らすものの心情をうまく表現していた。