エル・トポ

movie_kid2010-10-11

これぞ、カルト映画の真骨頂だろうか。製作40周年記念でデジタルリマスターされ、当時の退色されていない色で再現されたデジタル処理の技術の高さだけではなく、どちらかと言えばデジタルとは反対方向でこの映画はただ者ではなかった。乾燥した大地、砂漠と紺碧とでも言えばいいのか、ひたすらに青い空の風景に、鮮烈な血の赤が強烈で象徴的に使われる。はじめっから虐殺で幕を開け、俗悪で人の命を軽々しく十把ひとかけに扱う残忍さは、湿気を帯びたものではなくカラカラに乾いた恐怖だ。そんな俗世を突き進むガンマンの物語。
表情一つ変えずに我が子の手を離す凄腕ガンマンは、女に取り込まれ、悪魔にも魅入られて最強のもの達に対決を挑む。卑怯な手段もいとわずに貫くその先に待ち受けているものは・・・。
サム・ペキンパーは、スローモーションで見せる事で表現したが、バイオレンスを残像として見せる技があるように思えた。写真的な強さで、ワンカット、ワンショットを焼き付けられる感じだ。
宗教的なニュアンスが、濃厚に漂いつつ特定の地域や時代も超越した地球外惑星の様相まで感じさせていながら、どうしようもない人間の愚かさに到達する力技に感服してしまった。
世界の果ての自分たちのいる世界を目の前に見せつけられたような、はっとする血の赤と紅蓮の炎のオレンジ色だった。