瞳の奥の秘密

movie_kid2010-09-20

人の人生において、重き長い時間がどんなものであるか。25年前、結婚したばかりの若い女性が惨殺された事件から時を経て、その事件を担当した裁判所の検事事務所の職員が退職後、事件を振り返った小説を書こうとする話。南米文学、アルゼンチン作家の原作『瞳の問いかけ』を作家自ら脚本に関わり、映画的に改変して練り上げられていて素晴らしい。
生々しい殺人事件と、小説を書く主人公の当時の生活、思い、事件との関わり、年を経て今の割り切れない気持ち、書く行為そのままのように時間軸が前後しながらフラッシュバックのように場面が入れ替わる。その映画の始まりからして、絡み付き、そして流れるような詩的な映像に説明もないままなのにぐっと心をつかまれて行く。年を経た現在と25年前の事件、その経緯とともに進む刑事裁判所での時間、犯人、当時アルゼンチンの政治の腐敗、もろもろの事柄もしっかりとした骨格の上で語られるからこそ、ミステリーとしても面白いんだと思う。犯人を追い詰めるサッカー場の臨場感は、まさにお国柄が込められていて手に汗握る。
言葉や仕草ではなく人は瞳の奥で考え語っていると数々のエピソードから、わからしめる演出に唸り、人間の情念の深さに言葉もなくす見応えのあるものだった。自分の人生、25年前を振り返る事のできる年代にとっては何となくわかる事と、逆にとてもじゃないけどの両面からも感慨が湧いてくる色んな側面を持っているいい映画だった。