第9地区

movie_kid2010-04-24

突然、南アフリカの都市上空に巨大宇宙船が現れて居座り、昆虫エイリアンが難民化したお話。『冗談でしょう」って感じで始まり、異様で引きつけられ、これは面白かった。検証ドキュメンタリー仕立てで、手持ちのビデオカメラワークとカメラ目線で撮られているのが主人公のエイリアン科の担当者。荒っぽい編集と検証インタビューでその状況がどんどんわかってくれば来るほど、どうなって行くのがわからず引き込まれる。これは、かなり綿密に練られているぞと思いながら、難民エイリアンに手を焼いた国が、世界的大企業に丸投げして隔離策を取るのだが、舞台が南アフリカと言う所でジワリと効果が出て来る。
人間には使用できない高度な武器や科学技術を持ち不気味で不潔、エビと呼ばれ蔑まされる昆虫型エイリアンの造形を含め、人間との異質生物との混成の考え方などデヴィッド・クローネンバーグの『フライ』を思い出したが、ちゃんとオマージュも捧げるシーンもあって納得。
先陣を切る隔離政策担当者が、陥る変化の説明不足に戸惑いながらもますますどこに行くのかわからない突き抜け方を始め、人間の感情という厄介でそのとらえどころのない不可思議な所を軸に、最新技術とナイスな発想で独特の世界観を表現している。プロデューサーのピター・ジャンクションの見極めの力量は確かだ。SFのジャンルを飛び出してしまいそうな、楽しめる活劇と深い味わいがあった。