Dr.パルナサスの鏡

movie_kid2010-01-23

突然、登場する怪しげな大道芸の馬車仕立ての移動舞台。欧州では、ジプシー文化が認知されているから、すんなりとこの怪しげな世界感に抵抗もなく入っていけるだろうけれど、こう何の前置きも説明もないまま訳の変わらん世界に放り込まれ観客はあっけにとられる。
しかも、どうやらカーニバルのジプシー大道芸に止まらず、東洋的要素も加わり、世界の成り立ちにまで遡るほどの大きな物語の気配。
悪魔が出て来たと思ったら、なんと、トム・ウェーツだよ。しわ柄歌声の大好きなアーチスト。黒いシルクハットの悪魔君風で、どこか戯けた感じが悪魔のイメージとはかけ離れているけれど、その得体の知れなさはさすが。
ある種のパワーを修行によって手に入れたDr.パルナサスとこの悪魔が賭けをするのが大筋。この映画の撮影中に急死したヒースレイジャーが、狂言回しで映画を引っ張って行きつつ、盟友のスター3人が引き継いで鏡の中のより怪しげな世界へ誘ってくれる。
すさましいほどのイマジネーションと東西問わずあらゆる要素のごった煮的世界観はまぎれもなくテリー・ギリアム印で、圧巻だ。そして、映画全体に若くして逝った才能ある役者をあの世に送り出す、観ている観客をも巻き込んでおこなわれる儀式のような感じを持った。夢とも現実とも捉える以上に、とっても大きい世界観で、この映画は世界の果てまで連れて行ってくれるのだ。