倫敦から来た男

movie_kid2009-12-26

夜の海、モノクロームの画面が水面の位置からゆっくりと、しかし、着実にカメラを上に移動して行く。
船を真っ正面から捉えたまま、その先端まで行くと甲板が一望できるようになり二人の男のシルエットが何やら秘密めいたやり取りとしている。カメラの視線がその一部始終を眺めている人物の存在とシンクロして事の成り行きを見守る。
夜の港、犯罪の香り、モノクロームの映像がこれ以上はない雰囲気を醸し出す。男達や街を追って行くカメラが、絶妙のリズムを保ってるのだが、困った事にそれが睡魔を誘う。光を捉え、ため息のつくカットを重ね、必ず余韻を漂わせる長回しが空気中に残る色までも表現し、フィルムに焼き付けている。半睡のまま観終わったけれど、不思議な重量感が心の中にズシリと残っているような妙な感覚が残った。