アンナと過ごした4日間

movie_kid2009-11-15

病院の下働きをする男、見るからに陰気で暗くて不気味。今にも何か仕出かすのか、わからない怖さを漂わせる彼をカメラは執拗に追って行く。絶対ヤバいよ、こいつは今に、それとも過去にむごたらしい殺人とか犯しているかのように、疑心暗鬼を沸き立たせて緊張感が持続される。時間が前後しているだろうとは何となく思わせながら、セリフも少なく状況が把握できないまま切迫感だけは募らせてゆく。
男には、気になっているアンナと言う看護婦がいるが、決して近づかない。彼女を遠目からいつも観察しているのだ。どうやらアンナが気がつかないだけで完全なストーカーで変態。とんでもない事を予感していたら、ちょっとした手段を使って眠り込んだ彼女の部屋に忍び込むのだ。女性なら、身の毛もよだち悪寒のする展開が、驚く事に純粋な愛の物語になる。これは、見事としか言えない演出で、わかりにくかった状況の、細かい隅々までがカチリと噛み合って、人の本質に触れてゆく。
滑稽でいてもの哀しい人間という生き物。胸が締め付けられる、至福と挫折。
斬れのある映像、的確な音楽、少ないセリフ、無駄のない物語。本物の映画の神髄に、心も身体も震えた。心にくさびを打たれた思いの、東欧・ポーランドの知る人ぞ知る監督の映画だった。