リミッツ・コントロール

movie_kid2009-09-22

謎めいた暗殺を請け負った、黒人の男。次々に現れる、怪しげな人物。やり取りされる同じ図柄の色違いのマッチ箱。その中に小さく折り畳まれた暗号を一瞥するなり口に含み、エスプレッソで流し込む。
裸の女、全身が白いブロンドの女、日本人の女(工藤夕貴)、バイオリンを抱えた男、『スペイン語は話せるか?』と、話しかけ同じボクシング図柄のマッチ箱を交換して行く。何がどうなっているのかわからず徐々に観客はいらつき始めるが、仕事を請け負った男も何もわからないままスペイン中を放浪する。
それにしても、現れる奴らの存在感は半端でない。特に、女達は得体の知れなさがその肉体の内側の奥から発せられているように感じる。彷徨い続ける町並みも、アングルの良さも含めまぎれもなくスペインの空気感だ。だからこそ、スーツ姿の黒人がおかしいほどに異様なのだが。
音楽といい、撮影といい、何よりこのストーリーが、監督ジム・ジャームッシュのやり口だ。普通に語らぬが、感じさせる映画にこれ以上言葉は必要ない。実験映画ではなく完成されている映画が、配給、封切られている所にまだまだ、映画は大丈夫だなと思った。
男の旅は終わり、仕事は完結され、映画は終わった。