幸せはシャンソニア劇場から

movie_kid2009-09-20

シャンソンって上品にお高くとまった感じで、ちょっと嫌だなと思っていたが、全く間違っていた。ごく普通の大衆の人々が、普段から思っている何気ない正直な気持ちを歌詞にして歌っている。
世界大戦前で世界恐慌の余波の不穏な空気の時代、パリの郊外、下町にある古くからの劇場の明かりが消えた。役者も裏方も街にあふれる失業者と同じ憂き目にあい、長年、幕引きの仕事をして来たピゴワルは妻にも去られ失意のどん底ながら健気な息子のおかげで生活を続けていた。
その息子も、別れた妻の再婚相手が金持ちだったため引き取られてしまい、自分に定職がない限り息子にも会えない。劇場を復活させて仕事を取り戻し、息子を取り戻すしかないと立ち上がると、一癖二癖ある人々が集まってくる。再生のドラマに、たくさんの思いや愛、憎しみや裏切り、恋や夢、歌にのって劇場で繰り広げられる。この古くさくて懐かしい時代と人々を使って、まさに現代の人々が必要とするテーマ、再生を強く感じさせる。
時と共に大事なものを無くしてしまう人生に諦めないで前向きにと、パリっ子でなくても、シャンソンが心に沁みて涙がとまらない。なのに、やっぱり人生はしょっぱい。そのしょっぱさもまた人生さ、と映画の中にギュッと押し込んで魅せてしまう手腕に、惚れ惚れとする。古き良きフランス映画ばかりか、ハリウッドのミュージカルにもオマージュを捧げ、歌一つ一つまで磨き上げ、人生讃歌を極めた極上の仕上がりなんですよ。観るしかないよね。