人生に乾杯!

movie_kid2009-07-20

きみまろトーク・ライブの様相で、夏の暑い中、シニアの人々が映画館に押し掛けていた。馴染みのない東欧の小さな国、ハンガリー映画。それも、81歳のおじいちゃんが、困窮極まった年金生活を打破するために拳銃をブッ放し銀行強盗をする話。当然のごとく今の日本のシニア世代のフラストレーションの溜まり方が尋常ではないのだろうかと、この盛況ぶりを見る限り思ってしまう。
さて、本編はやっぱりというか意外というか、ちょっとゆるーい雰囲気。そこかしこにある無言の間は、フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキを彷彿させる。同じ貧しいヨーロッパの外れ、似たような境遇が近しい感じを持つのだろうか。旧ソ連と国境を接し歴史的にも、侵略と社会主義、近年の暴力的資本主義の導入で、混乱の末の高齢者強盗の物語なのだろう。
ソ連製オールド・カーにすっくと乗り込み、貧困の生活から打破すべく走り出すカッコよさ、よ。かかる曲もムード歌謡、そうクレイジー・ケンバンド風となればますますアキ監督の『過去のない男』を思い出す。老齢だけに頼りないと思いきや筋金入りの一途な突っ走りと、思い出したようにだが、我妻への限りない愛が胸を打つ。
おじじパワー全開で、警察も出し抜いて行くしたたかさをテレビ放映されて鬱屈した民衆も拍手喝采。逃避行のようでも、この老夫婦は自分達の人生から逃げ出している訳ではない。遥か昔の出来事も、そして、今も二人が生きている限り、なにもかもひっくるめて輝かしい人生なのだ。後ろ向きに苦難に甘んじるのでなく、腹を括ったその姿はひたすらカッコ良く対比させるような現役世代は、なんだか無様に見えてしまうほど。目の前の愛する人を、何を置いてもしっかり抱きしめる事が、乾杯に値する人生だと言っている、のね。
年齢などは関係ないと言い難いほどに老人パワーの映画で、観客に媚びない姿勢からくるのだろうか、ゆるくたってちゃんと爽快感あったよ。