映画を観ると得をする

movie_kid2009-07-08

池波正太郎 著 新潮文庫

映画ファンに、勇気と力をくれる本がある。本のタイトルはなんともベタだし、作家・池波正太郎と映画は、イメージが繋がらないよね。「鬼平犯科帳」などの時代もの作家で、食通で粋の人だとは知っていたが、小説を読んだ事もなかったし馴染みもなかったので、映画好きの飲み友達に薦められても半信半疑だった。
読んでみたら、映画狂(シネマディクト)と紹介されるほど映画好き。それにしても「シネマディクト」なんだか、いい言葉の響きだ。この本は発行も昭和、取り上げられている映画もかなり古いもので、書き方もちょっと説教臭くも感じるかもしれない。でも、作家先生が締め切りに追われ、どんなに忙しい中でもなんとか時間を見つけて、いそいそと沢山の映画を観に行っている。作家ならではの洞察力であらゆるジャンルの作品を例にあげ、基本的な映画の良さと見方を説いてくれる。
映画というのは本気で付き合って余あるものだと、じっくり語ってくれるのだ。世の映画好きよ! あなたは正しい! そして、もう少しこつをつかんで映画を観れば映画は本当の宝物になるんだよっ、てね。
面白くない映画を連続して観てしまい、時間と金を注ぎ込んで自分は何をやってるんだとへこんだり「もっと大切なやらなければならない事、いっぱいあるでしょ」と、誰かに言われそうだし自分でもつい思ってしまい、弱気になって土・日に連続して観に行けなかったりしても、人生の大先輩で、人気小説の作家先生が励ましてくれるんだ。映画を観るということは「いくつもの人生を見る」ということだよ。まさしく、自分の人生を豊かにするためにこそ、映画を観るのだ。もっと、自信を持って映画を観ようと、言ってもらえる本。
いいでしょう。勇気百倍で、またチケット握りしめて映画館に行きたくなってくる。何となく映画を観に行くより、なんで自分は映画をわざわざ映画館まで観に行くのか。ちゃんと思い考えてからだと、真剣さも変わってくるから見えないものが見えて来たり、以前よりは映画がわかって来たりする。タイトル通り、まさに得をしちゃう事に繋がる。