マン・オン・ワイヤー

movie_kid2009-06-21

やり遂げた時に、アメリカ人達は
なぜ、何故、Why、Why・・・
と、実利的にそればかりを聞いてくる。
理由がないからこそ、素晴らしいのに。
1974年、ニューヨーク。ワールド・トレード・センターのツインタワーに
鉄鋼のワイヤーを渡して、その上を渡ったフランス人の男の言葉だった。
当時のフィルム・写真、当事者の現在のインタビュー、再現映像など織り交ぜて
ドキュメント映画にまとめたもの。この部門で今年のオスカーも取っている。
もう30数年も前の事なのに、証言として語るこの事件に関わった人々
実際の綱渡り師も饒舌で元気いっぱい、キャラクターも際立っている。
一緒にサボートした者は、今まさに目の前で起っている事のように
涙を流しながら当時の感動のままに語り、それがダイレクトに画面から伝わってくる。
一見、単純に子供じみた行為の様に思えるのだが
じっくり考えてみると、まさに命をかけた犯罪行為で準備する道具立ても大仕掛け
途中、見つかれば即失敗で大きなペナルティーを課せられる。
仮に、成功まで漕ぎ着けたとしても果たしてそこにどんな見返りがあるのやら。
決行のその時とダブらせながら、一つ一つ検証を重ねた末に
誰もが息を飲む、その行為が「美しい」の言葉に辿り着く。
地上から口をぽっかり開けて見上げる群衆やら
当時タワー上に上がり、逮捕した警官の証言フィルムなども効果的に
その出来事を盛り上げ、マイケル・ナイマンの音楽が余韻を残す。
チラシ、予告篇で見た最初の衝撃から、この映画を通してまた同じ写真に
改めてより深い感動を覚える事に。
紛れもない真実とその影に隠れて姿を表さない事をも想像させてくれる
素晴らしいドキュメンタリー映画