三浦半島、海を見に行く。

夏が近づいてくると、無性に海が見たくなる。
水中眼鏡、シュノーケル、フィンの素潜り3点セットを持って、出掛ける日が待ち遠しかったのも、遥か昔のこと。
うんざりする酷暑の夏が、またやってくると年々落ちてきた体力を気にする季節の到来だが、まだ少しは、照りつける太陽と青い海の風景を心の隅で求めているところがある。
勤めていたデザイン事務所の社員旅行で行った、梅雨明けの江ノ島が気に入ってしまい、その後、毎夏に(もう、5年ほどになるのか)江ノ島に遊びに行く習慣ができている。こちらの方は、時々、かみさんも参加するようになり梅雨が空けた頃に予定を入れてある。
もうまもなく梅雨に入りそうだが、夏のような晴天になると、どうにも海が見たくなってきた。ここは、梅雨入り前の駆け込みで、最近お気に入りのワイン外飲みランチを準備して、海を見ながら一杯やることにする。

↑ちょっと足を伸ばしただけで、こんな眺めを手に入れられる。三浦半島城ヶ島公園から島の反対側の漁港まで、短いハイキングコースもあり、歩こうかなとも思っていたが、結局、灯台に行って海を眺めていただけですっかり満足した。
好きな葛西臨海公園は、野鳥もたくさんやって来るいい干潟ではあるが、東京湾の奥まっているところだけに海のイメージが、ちょっと違う。
少しは足を伸ばしても、千葉方面か、もしくは横浜、横須賀、そうだ、三浦半島があったか。京浜急行で、品川から三浦半島の終点、三崎口まで行き、乗り換えたバスで城ヶ島に渡る。自宅の最寄りの常磐線が、上野・品川ライン開通で、乗り換え無しに品川まで行けることから自宅から2時間もかからず、海を見渡せる場所に立てることがわかった。
京浜急行では、お得なセット切符もいろいろと発売されていて、バスを含めた三浦半島地域の1DAYフリー切符を買うことにした。品川からの電車・バスで、城ヶ島までの往復料金が、1,920円で映画1本より少し高い程度。
後の費用は、持参のビール+ワインとランチだから、大人の休日にしては安いものだ。

↑乗り馴れていない電車に乗るのも、旅行気分を盛り上げてくれる。赤い車体もなかなかいいのだが、弾丸の様にぶっ飛ばすのには、驚いた。
すっかり旅行気分で、品川から赤い電車京浜急行に乗り換える。目の前に出発を待っている電車が、三崎口行き特快で、間違いないと思いつつ座席は埋まり立っている人もかなりいるから、迷わず先頭車両に移動し飛び乗った。
運転席の後ろから見る京浜急行の列車は、とてもスリリングだった。とにかく、スピード出し、ぶっ飛ばし、立て込んだ家々の隙間の中を走り抜ける。
身のすくむ思いもしながら、列車は半島の先を目指し品川を出て1時間、バスに乗り継いで、のどかな港町についた。城ヶ島は、車の行き来できる大きな橋で、半島と繋がっていた。梅雨前とはいえ、晴れていてじりじりと照りつける太陽が眩しいが、城ヶ島公園内に入り海風が吹いてくるとひんやりと心地よい。

↑公園の広場や展望台があるところは高台にあり、急坂を降りて、磯に灯台がある。灯台を見つけたら、誰だって、そこまで行きたくなるものだ。

↑引き潮で出来た潮溜まりに、イワシの群れが取り残されていた。この後で、玉網を持った家族連れに一網打尽にされビニール袋に入れられていた。この家族の夕飯になるのだろうか?
展望台からは、どーんっと海が目に飛び込んで来て、水平線が見渡せる。
磯に降りて、ゴツゴツとした岩の先に安房崎の灯台があった。
潮溜まりの中に、イワシの群れが取り残されていてびっくりするほど、海水がきれいだ。沖合には、たくさんの漁船が操業しているほどの豊かな海のようだ。
灯台まで来てみると、まわりにはまったく日陰がない。海風があるので少しましだが、日なたではゆっくりランチとはいかないだろう。しかし、灯台のまわりは波が打ち寄せる見事な磯で、海に手が届く絶好のロケーションだった。
見つけた日陰は、太陽の位置の反対側で、要するに灯台の影になる場所が唯一だった。腰を掛けるには、ちょうどいいコンクリートの出っ張りがあり、そこに座り横にランチを広げる場所もある。ただ、ひっきりなしに人がやってきて、どうにも、落ち着かない。
ワインランチに踏み切ることもできずに持って来たビールを飲み、目が青く染まるくらい、ぼんやりとだが海を見ていた。

↑始めは目立たぬ様に、ビールから飲み始める。マカロニサラダの保冷のためペットボトルを凍らせて持って来たので、ついでにビールも入れていた。海を見ながら、冷えたビールは格別。

↑見事なくらい炎天下の磯で、唯一日陰の灯台の特等席を3時間余、占拠してしまった。

東京湾相模湾の中ではなく、太平洋と向き合っている気がする、きれいな海だ。少し涼しくなった、秋の晴れた日にまた来たくなった。
12時もだいぶまわった頃に、ぱったりと人が来なくなった。みんなどこか木陰でも見つけてお昼にしているのだろうと、こちらもワインのコルクをついにあけた。
海を眺めているだけでもいいが、のんびりと飲み食いしながらだとさらに気分がよろしい。目の前の打ち寄せる波しぶきに加えて、アルコールのさざ波も我が身に寄せて来て、舟にゆられているようでいい気分になってきた。
時々、人はやって来るが、その中のひとりの女性と目が合った。
「あら、いいですね」と、言葉をかけてきたが、青い海の灯台の日陰でワインランチの“ひとり飲み”も、それほど異常な姿ではないらしく、ちょっと安心した。(6月7日飲)

↑鶏肉のニンニクオリーブ油焼きにマカロニサラダ、ジャガイモとコンビーフで作るリエットはバケットに付けて食べる。赤ワイン用のレパートリーはこれだけしかないが、飽きていないので今のところ、これで充分。

↑帰り際、名残惜しく青い海辺の白い灯台。潜りたいとか、釣りもしたいとか、欲も出てきそうなアウトドアのフィールドだが、ただ海を見て飲み食べるのみが、日帰りの休日には気軽で、今の自分には合っているようだ。