『春はあげもの』に、励まされて

立春が過ぎても、梅が咲いても、日本列島に今期最強の寒気が降りて来て、寒い日が続いている。あまり東京で寒い寒いと言うと、比較にならないほど厳しい北国からお叱りを受けそうだけれど。
東京だったらどんなに寒い日でも、陽射しさえあれば、外にいることもつらくはない。このところ仕事の待機が多くなり時間もあることから、新宿御苑へは、1カ月余ですでに5回も行っている。やはり年間パスポートのおかげか。
広葉樹は、すっかり葉っぱを落として、園内は地味にひっそりとしているが、それでも梅は咲いた。寒桜もつぼみが、張り裂けんばかりに膨らんで来ている。
     ☆
今年も始まったばかりだが、世界でも、日本でも、自分の暮らしている地域でも、あまりにも悪いことばかりが目についてしょうがない。日本国民全員が、早く春が来れば少しは良いこともやってくるのではないかと思いたいような気がするので、ここは、一足早く春らしい写真をアップしたくなった。

新宿御苑、玉藻池の紅梅。どうしてだかわからないが、白梅より紅梅の方が早く咲くようだ。(2月6日撮影)
桜と違って梅の場合は、酒宴とは結びつかないし、酒飲みブログとはちょっと不釣り合いではあるのだが、春を待ち遠しい気持ちのあらわれといったところ。
新宿御苑のぶらぶら歩きの後は、基本的にどこかでひとり飲みをしているのだから、そこらあたりを含めてブログにと考えたが、取って付けたようになりそうで書く意欲もわかないままだった。
そんな時、いいものを電車の中で見つけた。
『春はあげもの』
サントリーハイボールの広告だ。
中刷りのメンチカツ、そして、串カツとあじフライのポスター2枚がセットになっているようだ。

↑自分がよく乗る常磐線の快速電車で、見つけた広告。山手線や首都圏の各電車で、見ることができるのだろうか? コピー、デザイン、写真の仕上がりの良さはいうまでもなく、強さと勢いがあり、春らしい暖かさも感じて一瞬にして気に入った。
すでに何度かこのブログでも触れたことがあったが、僕はコロモの付いた揚げ物を30歳頃から25年間、ほぼ食べていない。昨年末に大阪で飲んだ時、かみさんが強引に串カツ屋に行きたいと言い出し、隣の席で旨そうに揚げたてを頬張っても、別に我慢することに苦しむことはなかった。
なのに、このポスターのあじフライを見た時に、胸ぐらをぐっとつかまれたように目が釘付けになった。
かつて20代も前半の頃、独身時代に中央線の荻窪に住んでいて、駅前の『富士食堂』のあじフライ定食が大好きでよく食べた。当時、どんぶり飯と味噌汁とタクアン漬けが付き、キャベツの千切りもたっぷりであじフライ2枚の定食が、380円だったと思う。
そんなことも一瞬に思い出し、カリッと揚かったあじフライのパン粉のとげとげの口当りと、その後、サクッと噛んだ歯ごたえまで甦って来た。
揚げ物を食べなくなったことにすっかり慣れているつもりでも、心の奥深いところで食べたい気持ちが、隠されているのかもしれない。しかし、ただ単に食べたくなった訳ではなく、このポスターからは、励ましのようなものを感じた。
今は寒くて、悪いことばかり起る世の中でも、春はもうすぐやってくるよ、一杯やって元気出して行こうよとエールを送られているような気分になった。
だからと言って、僕はあじフライをもう食べないと思うが、このポスターからは元気をもらったようで、人にも話したくなったのだ。