ひとり歩きブルース(?!)

前にも書いたことがあるが、50歳をすぎたあたりからよく外を歩くようになった。
40歳代は、義理の父母が住む奥多摩の低い山歩きをしていたが、今ではそんな元気もなくなってきて、かわりに近くの上野公園とか、映画を観た帰りに街中をただ歩くだけで、なんだか気晴らしになっているようだ。
公園野外飲み何てことを思いついたのも、このやたらに外を歩き回る所から始まった感じでもある。
歩く公園として近場で、一番いいのが『新宿御苑』だ。
大きな木々も多く、整備も行き届いているが、自然の良さをちゃんと残していながら日本庭園の様式美も味わえる。

新宿御苑、年間パスポートは、2,000円なり。氏名の映画小僧は、フェイク。カタカナ表記で、本名を入れている。さすがにこれをかざして、酒類持ち込みのルール違反は出来ないよなと思った。プラタナス並木があるフランス式・整形庭園をバックに。
桜の季節に大挙して花見客が押し掛け、飲んでどんちゃんやり過ぎた結果、完全に飲酒、酒類御法度の公園になってしまいシーズンには入り口で手荷物検査まであり、寂しい限りだ。
それでも、四季折々、いつ行ってもその季節なりの花や見どころがある。新宿駅から歩いてすぐの所に何とも贅沢な公園だ。外国人、海外からの観光客も一年中訪れているところからしても、東京でも有数の景勝地だ。
特に昨年の2月に2週続けて降った大雪の時は、公園内は、本当に別世界だった。このときばかりは、ポットにお湯と焼◯を隠し持って、雪見◯をしたレポートをこのブログでも紹介した。
桜の季節はもちろんのこと、夏には涼風を求めに、秋の紅葉は長く楽しめて、季節の折々にこの公園にはたびたび来ていた。そんな思いが高じた昨年末、年が改まって、最初に来園する時に念願の年間パスポートを手に入れようと、密かに決めていた。
本当は、そんな大げさなものではないのだが、新年もスタートしたことなので、冬の寒い時期だが、どれ行ってみようと思い立った。
来園する人も少ないこの時期だから、申し込み用紙の書き込みも簡単に、すぐ顔写真入りカードを作ってくれた。惜しむらくは、週末の昨晩は飲んで帰ったので、ひげ剃りを忘れていたことで、パスポートの写真は無様なものだった。

↑広々と芝生がひろがるこのあたりはイギリス・風景式庭園で、園内で、一番背の高い(たぶん)ユリノキ雄大だ。

今朝は、朝飯も食べずに、そそくさと出かけて来たので、手続きを終えすぐ見つけたベンチで、途中で買った玉子サンドを、ポットに詰めたホットコーヒーを飲みながら食べた。
街中とは、比べ物にならないくらい気分が良く玉子サンドもコーヒーも旨い。それに、何より、年間パスポートを手に入れたことの嬉しさがこみ上げて来た。
さて、腹も落ち着いたので歩き始めると、パスポートを手に入れたことで、なんだか、この場所との繋がりがより親密に太くなった様な、自分はこの土地、ここの自然と一年間一緒に生きて行くのだといった幸福感が沸いてくる。とても、不思議な感覚で、自分でこんな気持ちになることに驚いた。
人が少なく静かな木立の中を歩きながら、この先の春の訪れも楽しみだし、四季の移ろいを感じるために新宿には、飲みに来るだけでなく、もっと頻繁に足が向くことだろう。

アメリカ原産の針葉樹『ラクウショウ』。ムーミン谷のニョロニョロのように地面から突き出ているのが“気根”といわれているもの。独特の雰囲気がある。

↑冬にも、きれいに咲く花がある。遠くからでも、スイセンの花の群生は輝いていた。
午後になって、冷たい北風が吹いて来たので、大温室に一時避難することにする。新しくなった大温室には、入ったことがなかったが、かなり、立派なものだった。熱帯のラン類の鉢も充実していて、貴重な種の保護などにも貢献しているようだ。
気がつくと、朝からもう3時間半ほどもうろうろと歩き回っていた。万歩計を確認すると11,742歩、8キロあまりも歩いている。
お腹もすいているし、年間パスポートを収得した祝杯をあげたい気分だから、ここは『思い出横丁』に行くしかあるまい。狙っていたように、土曜日の午後で『カブト』は営業している。
結局の所、ひとり歩き = ひとり飲みブルースと言ったところだろうか。(1月17日飲)

新宿御苑を出て、新宿通りまで来るといつもの喧噪の街。さっきまでの静かさとの落差にくらくらするが、それもすぐにいつもの通い慣れた新宿に、思い出横丁に順応した。

↑思い出横丁の新年会に出かけたおやじさんのかわりに、焼き台に立つ娘さんにさっそく、新宿御苑の年間パスポートの話をした。彼女も季節のいい時には、友達と伊勢丹でちょっと贅沢な弁当を買って、御苑にランチに行くそうだ。そんな御苑に何回でも入れる年間パスポートを持っていると、自分の庭のような気分になったと言うと「それ、素敵」と反応が良かった。