『大はし』に元力士、高見盛関あらわれる

新宿・思い出横丁の『カブト』の売り切れ続出の大盛況を報告したばかりだが、ひいきの店のもう一軒、北千住『大はし』もその人気は衰えを知らない。
ゴールデンウィーク期間だからということもあるが、休み前は特に店は混んでいる。日曜と祝日にはさまれた飛び石の平日だったが、仕事の具合で休みになったので、これは早くから『大はし』に行ってゆっくり飲もうと思った。
自宅にいたので、散歩がてらに歩いて北千住に向かった。途中で、隅田川にかかる『大橋』を渡って『大はし』に飲みに行くのは何とも粋ではないかと、すでに何度も書いたっけ。

荒川区の自宅から、隅田川にかかる千住大橋を渡り『大はし』にてくてく歩いて飲みに行く。自分的には、なかなか贅沢な休日だ。

荒川土手まで行くと、鯉のぼりが気持ち良さそうに泳いでいた。まさに、ゴールデンウィーク満喫。
荒川土手まで歩いてから、銭湯に入ったおかげで開店時間の夕方4時半も過ぎてしまったが、今日は、ただ飲むだけの日だからのんびり行こう。
やはり、それが甘かった。
5時前の時点で、5人が店から溢れ外に待っていた。休みの人も多いのか、それからすぐに10人以上に列が伸びた。かつて、土曜日に営業していた頃に開店前に並んだ記憶がよみがえってくる。その時と同様に、道行く人々が、この行列は何だろうとじろじろと見て行く。おばさんなんかは、平気で「なんで並んでるの」と、聞いてくるから始末が悪い。
どう考えても、客は1時間ぐらい飲んでいるものだから、開店に満席ならそれくらいは覚悟しないといけない。目の前で、満席となったら悲惨で、だからといって飲まないで帰るのもつらいところだ。

↑のんびり散歩と、銭湯のひとっ風呂で開店時間に遅れて、店外で待つ事になってしまった。自分の前に並んでいる人たちは慣れてなくて、中で5人ぐらいは座って待てるけれど入るタイミングを見つけられないでいるようだった。教えてあげて、途中から中で待つことができた。
じりじりと待っている30分だったが、席が空いたと同時に「こっち、こっち」と手招きしてくれ、自分の金宮焼酎のボトルと氷、梅シロップ、炭酸のセットがトントンと用意され、肉豆腐がいい匂いさせて出されるとすっかりむくわれた気分になった。
さて、待っている間にさんざん吟味したが、ここでもう一度、飲みながら刺身は何を食べるかと考えるのは楽しい。メニュー短冊の“初かつお”は、文字面からして眩しいくらい輝いている。「さぁ、何にしましょう」と、おやじさんの顔が曇ったのは、すでに“かつお”は売り切れていたのだ。それはそうだろう、この時期に“初かつお”は無視できないよ。気を取り直して、イサキのたたきとイワシす(セグロ、と但し書き入り)でぐいぐいと飲み進んだ。
いつものごとく、店内は喧噪の渦だったがひときわどよめきが、特に女性のキャーッとなった先を見たら、なんと、元力士の高見盛があらわれた。そして、入口横の待ち席にちょこんと座っている。少しはにかんだいつもの表情で、先ほどまで自分もじりじりと待っていたところにいるのだ。もちろん、身体がでかいから目立ちはするけれど、妙な威圧感もなくすっかり馴染んでいる空気感だ。
連れはいるようだが、力士は彼だけで、おやじさんもすぐ挨拶には行ったが、別に特別扱いをするでもなかった。その後、空いたテーブル席についたが、できれば二人分の幅はとるだろうが、同じカウンターで飲んで欲しかったなぁー。
駅でもお相撲さんがいて、でっかい身体が近くにくるとドキリとするものだが、意外にも下町の居酒屋では妙に似合う存在だった。両方ともに長い歴史からくる品格の波長が、合うのかもしれない。(4月28日飲)