ホーリー・モータース

movie_kid2013-04-11


ポスターに“レオス・カラックス監督、13年ぶりの帰還”の文字。そうか『ポーラX』から13年、もうこの監督は、映画を撮れなくなってしまったのかと悲しんでいたところで、本当にお帰りあなたの映画をまた観たかったと、感慨深く思う。初期『アレックス3部作』のアレックス番外編的な今回の映画は、監督の映画に対する長年の想いのつまった作品だった。パリの都市を舞台にその狭間や隣り合わせの異界に出没する、誰にでもなりえて誰でもない男の一日の物語が、SF風、もしくはコメディーにもみえる。時々、差し込まれる人体アクションの映画黎明期のフィルムに、映画の驚きの初心を思い出され、かつてアレックスだった役者ドニ・ラヴァンの肉体そのものが、レオス・カラックス監督の映画の中で眩しくも強烈な個性を映像の中から放っていた。かつてのように全編一瞬のスキもないようなつくりから比べたら、オムニバス風のエピソードの数々の中で出来不出来があるのだが、思わずハッとして息をのむ美しさと煌めきを秘めている映画だった。