連休前には、やっぱり、飲まないと

(10月5日)
秋の体育の日にからむ、三連休はどうやら休めそうになさそうだ。休めないなら、休めないからこそ金曜日ぐらいは、飲みに行きたいのが人情っていうものだろう。遅くならずに帰る方向に頑張ってみても、夜の9時をとうに過ぎてしまい行ける店も限られてくる。新宿に行ったらかなり遅くなってしまうが、迷わず、いや、駅に向かう道すがらあれこれ考えてみても、結局は、思い出横丁に行くべく地下鉄の降り口に足は向かっていた。

↑昼から夜の10時頃まで、何も食べてなかったんだもの涙がこぼれるほどの一瞬。
『ささもと』は、相変わらず繁盛していた。
息せききって店の前に来たものの、外からではどう見ても席はいっぱいの様子だったが、焼き台のおやじさんが、奥の方のカウンターの客に少しつめてあげてと、ひとりがやっとねじり込めるスペースを作ってくれた。
焼き台からは、遠いのでおやじさんに直接あれこれたのめないけれど、またずに座れたのだとにかく煮込みとビールを緊急状態の空腹の胃と心に流し込む。
焼き台の近くなら、大きい氷のバットに置いた生の肉や野菜の串を見て、あれこれ食べたくなったものを注文するのだが、オーソドックスにカシラやタン味噌、オクラ、水菜と茗荷肉巻きを焼き手のおやじさんの後ろに控えている茶髪のお兄さんに注文する。

↑なんの変哲もないオクラだけど、煮込み鍋でたっぷりと煮汁を含んでいる。そして、王道のカシラ。

↑水菜の肉巻き。煮込み鍋で程よく火が通り、これにもたっぷりと煮汁の味が入っている。

↑茗荷の肉巻き。毎度の事ながら、茗荷がいい仕事している。
だいたいにおいて(店の作りに関係なく)人気のある店の若い衆は、できる奴が多い。一癖あるが腕のたつおやじさんを師事して、技を盗み磨くべくてきぱきと動いている。ここ『ささもと』は、おやじさんの話しぶりは変わっているし、続く若い衆も金髪だったり、腕入れ墨だったで見かけはちょっと変だが、クールで仕事はできる。
今夜のようにカウンターの奥の方で飲むことになっても何の不便もないのだが、焼いている串の肉やその手つきを見たり、ぐつぐつとささやいている煮込みなべの中をぼんやり眺めながら飲むことができないので少し寂しい。

↑冷えた金宮焼酎。梅エキス、一滴で魅惑の飲み物に。

↑塗った味噌も少し焦がして香りもよい。

↑レバとコブクロのネギ醤油。たっぷりのネギが、清涼感満喫で焼酎もすすむ。

↑ハツに、ゆず酢をかけてもらった。さっぱり感が、ハツの食感と合う気がする。

「お客さん、写真を後で見たりもするんですか? カブトでも、そうやって写真撮っているの」
焼き上がる串や金宮焼酎の写真を撮っていたら、金髪のクールな店のお兄さんが、話しかけてきた。
それに、ウナギ串焼き『カブト』に通っていることをしっかり認識しいている。横丁の目と鼻の先にある店同士で『カブト』でよく見かける客のおっさんも、ここ『ささもと』で見たことは何度となくあるから、両店掛け持ちのファンは多いのだろう。土曜日の夕暮れ『カブト』から出てきて、金髪の彼が焼いているのを、見かけたこともあったっけ。
酒を飲むと、どうしても後からなに食べたんだっけと忘れてしまうんだ。毎回、同じような写真だけど、本人にとって後から写真を見たらその時どんな事思いながら食ったり飲んだりしていたのか、ふと思い出したりするのでいいんだよね。『カブト』だと、七本のセットと追加のマル塩だけだから、年中変わらないけど、それでもお新香にラッキョが入っているかどうかや、光の加減で季節がわかったりもする。
チラホラと客も店じまいを前に帰りはじめたなか、金髪の兄ちゃんは洗い物をしながら、こちらの言っている事をふむふむと聞いていた。
ごちそうさまと言うと、サービスのスープどうしますかと聞いてくれた。そうそう『ささもと』の締めはこれだよな「ゆず、ちょっと入れて」とお願いした。

↑煮込み鍋に漬けている調理時間によって、キャベツのくたくた度の違いで味に大きな差ができる。まぁ、好みの問題と最後3杯目の焼酎の残り具合で時間も限られているのだが。

↑同じ煮込みの汁だが、ゆず酢を入れるとこれまた味が一変する。サービスのスープを飲んで串の本数を数えてもらい、お勘定する。

時間的には、帰った方がいいのをわかっていながら、やっぱり向こうの通りの『みのる』でハイボールを飲んでしまう。地下のこの店には、いまだに昭和の空気が淀んでいて酒で痺れた身体をそっと包んでくれるようだ。終電間際にも関わらず、店は大盛況で危うく入れないところだった。みんな連休前に、浮かれて深酒しているんろうが、仕事の我が身にはこのハイボールは沁みるなぁー。

↑お通しのミートスパゲティーが、どうにも昭和を感じてしまうのは自分だけだろうか。それにしても『みのる』ハイボールは、相変わらず旨いな。