暑気払いが、燗酒の時期に

(9月26日)
飲み友だちと、暑気払いをしようと約束して日にちまで決めておきながら、前日の段階で明日はとてもじゃないが早く帰る事ができないと断念した。しかし、メールしたのがもう日付が変わるくらいの夜中だし、朝に読むだろうから当日のドタキャンという事になるか。
それくらいこの夏、暑いのは気温だけでなく我が身に降り掛かった仕事にひたすら時間を取られ続けた。今の世の中、仕事があるだけ有り難いと念仏のように唱えるしかないのだが。
困った事に、やっぱり、それだけ無理を重ねると身体に負担はつのるようで、長時間の座り仕事が原因だと思うが、軽いギックリ腰に2カ月の間に3度も襲われ気持ちも萎えていた。
せっかく、自由な時間が少しできても痛めた腰のために映画にも行けなくて、買っていたチケットも無駄にしてしまった。
こんなときこそ、気分を変えるために飲み友だちと一緒に飲むのもいい気晴らしになるだろう。暑気払いを通り越して燗酒の季節になってしまったが、連絡をとったら、さっそく行きましょうと話は決まった。

↑JR神田駅、地下鉄の銀座線駅からすぐの『三州屋』。いくつか同じ屋号で、何店舗かあるなかで二人の行きつけはここ。
この数年来、新年会は恒例の神田『三州屋』で燗酒を飲むのが、この飲み友だちとの二人の決まり事だった。律儀に冬にしか来なかった居酒屋だが、夏だって、銀ダラ煮付けで瓶ビールをぐいっとやるのもなかなかいいのではないかと、暑気払いにはこの店に決めていた。
結局、暑気払いが延期になり、秋になってサンマもおいしくなり、燗酒が旨く感じる季節になってしまった。あれだけ残暑が厳しい9月だったが、ここに来てやっと落ち着いたら何だか寒く感じる。それでも、18時30分に神田で待ち合わせたその日は、また、少しムシムシして南洋にいる台風の存在を感じさせた。
念願通り、銀ダラ煮付けと瓶ビール、刺身の盛り合せは各自にひとつづつにする。仕事あがりのビールは旨い。やりくりできて、何とか事務所を抜け出して心を解放して一杯やるひとときの楽しさだな。

↑ビールとともに、銀ダラ煮付けを計画通りに注文したが、ぐいぐいビールが進んで1本飲みきってしまっても煮付けが出て来なかった。残念。

↑刺身盛り合せが来たので、ビール追加でなく日本酒の常温二合徳利に。

↑各自ひとつずつだと、たっぷり楽しめる刺身盛り合せ。

↑やっと、煮上がってでてきた銀ダラ。本当は、メローって魚なんだよねと言っていたら、後ろの席でもまったく同じ話題を話していた。『三州屋』にきたら、この煮汁の煮魚を食べない訳にはいかないよとばかりに、みなさんこれを好きで食べるのだ。

どうやら、飲み友だちは夏休みに知り合いと一緒に“青春18切符”で、東海道線を乗り継ぎし大阪、岸和田までのんびり帰省旅行をして、9月にはハワイへの一週間の家族旅行に行ったそうだ。毎朝、日課のように海辺のジョギングした話など、こちらとはあまりにも差があるのだった。羨ましいというよりは、もう憧れるような休日の日々になんだかこちらも楽しくなってくる。
対抗する気は全然ないのだが、僕にも江の島のお楽しみの一日があったなと思い返す事もできた。少ない休みに、何度となく行った自然公園での夕涼み飲みで見上げた空の夕暮れもまた心に残っている。それぞれの夏が終わり、月日は移ろいで行くのねとおじさん二人は杯をかさねる。
やっぱり、燗酒にしましょうか? と、常温の大徳利から各自用燗酒の一合徳利にかえ、サンマを焼いてもらおうしたら今日はもう出てしまって品切れだという。みんな考えている事は、一緒なんだな。

↑途中から、燗酒にかえて季節の移ろいを実感した。

↑葉っぱものはなくて、なすの漬け物にした。

↑気分はサンマだったが、しかたがないと言っては失礼だ。いわしの塩焼きは、やっぱり美味しい。

さて、この後もう一軒は、どうしましょうかとなったところで、どうしても新宿・ゴールデン街に行きたくなっていた。漫画の連載をドラマにした『深夜食堂』第2集のDVDを、やっと観たばかりで、ドラマのタイトルバックの新宿大ガードから、靖国通りを歌舞伎町前を抜けてゴールデン街の片隅らしき食堂に近づいてゆく導入部分を何度も見ていて行きたくなっていた。

↑新しい店もあり様変わりしているようでも、ゴールデン街らしさは変わらずだな。
ゴールデン街の『ダンさん』に行きませんかと、我がまま言って付き合ってもらう事にした。中央線に乗って新宿まで出なくてはいけないが、こんな気持ちの酔い加減の日にはふらふら行ってみたいところだった。

↑『ダンさん』に入ったときは、僕らだけだったのでお店のケンさん、ベベさんとあれやこれやで話は盛り上がる。

↑自分がボトル入れているお店は、北千住『おおはし』とここ『ダンさん』のみ。それも角瓶には、二十数年前にここに連れてきてもらった作家先生の名前をいまだに書き続けている。継承したボトルのお守りを続けている訳だ。