うどん王国、ランチはもちろん“うどん”なり

身体に染み着いた焼きカキの潮の香りを翌朝も感じつつ、さて、仕事が始まった。緊張の午前を終えると、昼飯は、もちろんうどんだ。空手ならぬ『うどんバカ一代』は、名前からして突き抜けているようだが、ごくふつうの店構えでも昼ともなると行列ができていた。釜揚げ、ぶっかけ、トッピングなどなど、初心者はレジ前でうろたえる。とにかく、サイズを決めなければならない。同行者に、教えを乞うたら「やっぱり、大だろう」と、即答でその通りにしたら、えらいことになった。洗面器サイズの丼に、大量の釜揚げぶっかけうどんが盛り上がっている。聞けば、大はうどん3玉でとても僕の胃袋に入る量ではない。丼を受け取った時点で、食べきれないと悟った。

↑恐怖のうどん大。うどん3玉を、ぺろりと食べる客も結構いるようだ。

↑ごく普通の街並にいたる所にうどん屋がある。目立つ店名の『うどんバカ一代』は、地元でも人気があるらしく昼には行列ができていた。

同行者は、大の3玉うどんに生卵とバター入りをもりもりと食べている。驚異の胃袋に3玉のうどんが吸い込まれて行くのを見ながら、こちらは、半分食べたらもう入らなかった。食器返却口で、おばさんに「はじめてなので量がわからず残してしまいました。ごめんなさい」と平謝りに対して「今度は、中にしなさい」と言われた。
恥ずかしさのあまりすぐに店を出たのだが、満腹でゆっくりと出てきた同行者に若い女性が横で聞いていて笑っていたぞと、ご丁寧に報告してくれた。
午後からも、みっちり仕事が続いたが、大きい会社は残業をさせてくれないらしく18時で追い立てられる様に放免された。ここは、すっきりと頭を切り替えてホテルに荷物を置いてから、食べ飲みに繰り出した。なるほど、出張というものはこんな感じなのかと、頭の切り替えに遅れまいとビールぐいっと喉に放り込んだ。

↑出張が始まった当初、近辺の居酒屋をネットでしらべて到達したお店らしい。表通りを歩いているだけでは行き着けない場所で、ひっそりと奥まった所にあった『美人亭』

↑ほんのり塩味のエビは、香港を思い出す味だった。イイダコ煮はやわらかく、これも味がいい。ナマコ酢と高野豆腐の炊いたもの、シブい。

↑この時期に鰆が食べられて嬉しい。飾らないたっぷりな量で、満足できる。

昨年から始まったこの仕事で、高松滞在時に何度か来ているこじんまりした居酒屋『美人亭』は(姉妹らしい)おばちゃん2人が切り盛りしていた。瀬戸内海の魚中心で、お任せで旨いもの食べさせてくれるとのこと。前菜に出てきた茹でたエビやイイダコの煮物、ナマコ酢、高野豆腐の炊いたのなど素朴な味付けが素材を引き立てている。鰆の刺身は、早春の味で特に地元瀬戸内の魚の旨さを感じた。

↑素材を生かす薄めの味付けのメバルの煮付。味が染みた豆腐が、嬉しい。

↑大きい肝がたっぷり、丸ハゲは2匹でた。
個人的に揚げ物は食べないのでコメントもないが、イカナゴの天ぷらを食べるみんなの顔はほころんでいた。メバルやカワハギ(丸ハゲ)の煮魚も、もちろん酒の肴としていうことなしで、酒を飲みながら瀬戸内海を感じる料理を出してくれるのだからうれしい。

くぎ煮イカナゴだが、このサイズだから天ぷらで出た。揚げ物食べない自分としては、醤油の付け焼きで食べたい所。みんな猛烈に箸が止まらず、ぺろりと食べていた。この季節、初物だったらしい。