焼きカキ天国、高松の夜

市内からタクシーで30分程度タクシーを飛ばすことになった。電車でも行けるそうだが、天気もあまりよくないし5人いるのでタクシーに乗ってみたもののかなり遠く感じた。街道から外れると何もないところで静まりかえっているが、どうやら、漁港のようだ。奥まで入って行くと本家・鎌倉屋があった。のれんと看板の◯に“か”の文字が、目に飛び込んで来た。

↑『かき焼の店(マルカ)本家鎌倉』が、正式な店名らしい。

↑瀬戸内海をはさんで、向こうは岡山、広島も近いから牡蠣の本場のエリアに入るのか。やっぱり、瀬戸内の海は、想像以上に海の幸が豊なのだろう。

↑一歩店内に入ると、充満する濃縮された潮の香りと雰囲気に圧倒された。

↑1個、2個なんての感覚でなく、スコップでがさっ、がさっと鉄板にのせてゆく豪快。

↑カキ殻は、焼くとはぜるので鉄板のふたは安全対策と熱のまわりもよくなるので一石二鳥。
ここは、焼きカキの専門店。もう暗くてまわりの状況がわかりにくいが、潮の香りもしてすぐ裏に海があるのがわかる。店内に入ると香ばしい潮の香りが、濃厚に充満していた。倉庫のように少し高い天井で、半畳ほどの大きい鉄板のまわりにぐるり椅子やベンチを置いて囲んでいる。そんなセットが10卓ほどあり、各鉄板のまわりに8人ほどの人が取り巻いて、焼けるのを待っていたり、食べたりとワイワイ楽しそうにやっている。
5人グループの僕らは、その鉄板の席についてみるとやや心細い。何故かといえば、大きなスコップで大量のカキが、どどっと鉄板に並べられ一度にこんな大量のカキを焼き始めることなど目にしたことがない。焼けたカキ殻が、爆ぜても大丈夫なようにはじめはふたの鉄板をかぶせられているのだが、頃合いをみてガードの鉄板がとりはらはれ、その全ぼうがあらわれた。おばさんが焼け具合をみて選り分けてくれ火の通ったカキを目の前に置いてくれる。
軍手をひとつと、専用の貝むきが用意されている。焼けて半開きになったものは、簡単に殻があき、ぷりっとしたいい香りのする身を頬張る。味を付けずに食べてみたが、潮の香りが口に広がり焼きたての柔らかいカキの身がとろけた。旨い。

↑すでに香りと店の雰囲気に圧倒されていながら、とどめにどーんと焼きカキが目の前に飛び込んで来る。

↑今年のカキは、大きいよというだけあってぷるぷるだ。

↑そのままでも、潮の味で旨い。ポン酢をかけてもいいし、レモンやカボスなどの生の柑橘類がやっぱりいいかも。

↑だんだん、殻のしまったむきにくいのが残るが、専用の貝コテもあり苦労はない。ただ、早々に雰囲気にのまれて満腹信号を感じはじめた。

↑思いで横丁、ウナギの串焼き『カブト』では、肝焼きに入っている釣り針(天然ものもまじるので)注意の張り紙だが、ここは、ダイレクトにこの注意書き。

↑食べた後の殻は、足下のバケツに放り込めばいい。
100分の食べ放題方式で、酒類、薬味類などは、すべて、持ち込みOK。地元のみなさん、レモンや柑橘系はもちろん、大根おろしなどもしっかり準備してきている。ビールや飲み物の自動販売機が、店内にあり日本酒や焼酎も店にも置いてあるが、ワインや日本酒など吟味して持参したかったところだ。生ガキではないので、ワインよりはもっとどっしりとした吟醸酒あたりが、焼きカキをしっかり受けとめてよいだろう。
おじいちゃんから、孫たち親戚に声かけ合って10数人で来ている家族ぐるみや、学生のアベックグループなど、豪華に豪快に日曜日の団らんを楽しんでいる感じだ。平日なら、職場関係のグループで盛り上がっていることだろう。
店のことは、地元の人に紹介してもらったそうだがこの日、この時間にしか予約が取れなかったそうだ。紹介してくれた人から、店にはゴミ袋を用意する様に言われどうするのかと思いきや、脱いだ上着を入れておいて少しでも匂いを着かない様にするためだった。

↑炊きあがったばかりに感じるカキ飯。カキそのものも柔らかく、塩梅がちょうど良く、本当に美味しい。みそ汁が、熱々でたまりません。
もちろん、カキは1年中ある訳ではない。この店は、11月から3月まで、カキが無くなり次第で営業は終わる。
先ほどから、何度も次を焼きましょうかとおばさんが声をかけてきたくれる。まだ、食べきっていない状態なので、少し様子を見ますと答える。やっと、最初に焼いてもらったカキを食べ終わって、再度おばさんが聞いてくれたが、もう満足しましたと5人全員声を揃えた。普通、何回かおかわりをするそうで、豪傑は5回も平らげたそうだ。
では、カキご飯を持って来ましょうと熱々のみそ汁と出してくれた。このカキご飯も、むちゃくちゃ旨い。生のカキも食べたかったなと頭の片隅にありつつも、焼きカキとカキご飯の1本勝負の四国・高松の夜に驚きと満足感を味わった。

↑興奮のカキ屋を後に、市内に戻っても、あまりにも早い時間だった。もう一軒、居酒屋で酒は飲んだが、誰もなにも食べようとはしなかった。