『映画小僧大賞』2011年の10本


まず、1本目に選んだ『ビューティフル』だけが、DVDにリリースされていませんでした。それも、やっと1月の終わりに発売される事になって2011年の選んだ10本が全部DVDで自宅で観ることができます。でも、一番に選んだ映画がなかなかDVD販売されないところから、映画小僧が選んだ10本が自宅で気軽に楽しめるかといえば、違うように思っています。あくまで、2011年に映画館で観てよかったなと思った映画を10本選びました。その中でも、3本が少し思い入れが強いもので、後は、順不同的な感覚です。
この10本を、映画館で日替わり上映できたらどんなにか幸せでしょう。でも、10日間も連続して観に行くこともできないので、今年もまた、地道に時間を見つけて映画館に通います。
全部の映画のリストは、昨年の終わりに掲載しています。リバイバル上映は、もとから好きな映画なのでここでは選びませんでした。



『ビューティフル』アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督
1本目からつらい映画を選んでしまったが、人が生きて死んでゆくことに対して真摯に向き合った素晴らしい映画で、監督も含め主演ハビエル・バルデムの渾身の演技にうち震えた。貧困と人生にうちひしがれ、病に死に行くものの生き様があまりにも美しく涙した。


トゥルー・グリットジョエル・コーエンイーサン・コーエン監督
ジョンウェイン主演の『勇気ある追跡』が、往年の映画ファンにはいまだに心に残っているようだ。その人たちにはそれほど評価がよくないようだが、コーエン兄弟のファンにはとても好きな映画。時代も変わり今、西部劇をつくったらこうなるといった現代的な感覚が盛り込まれていながら、開拓時代のアメリカの大地と人々に憧れと尊敬の気持ちが伝わって来る。


ゴーストライターロマン・ポランスキー監督
長く、沢山のいい映画を監督してきたロマン・ポランスキーの貫禄と実力が滲み出た映画。俳優として魅力に溢れ、こちらも実力充分のユアン・マクレガーも素晴らしい。はじめから終わりまで一度として晴れた天気など出て来ない重苦しい荒天が続き、物語はじわりじわりと進み謎が深まり暴かれていく映画魔術の虜になった。


キラー・インサイド・ミー』マイケル・ウィンター・ボトム監督
破滅型の不思議な殺人者の物語。知る人ぞ知る原作ジム・トンプスンならではの狂気を表現していた。

まほろ駅前多田便利軒』大森立嗣 監督
瑛太松田龍平のコンビがよかった。龍平の役どころは、とても難しいと思ったが、さすがはと唸るほどに彼のものにしていた。

『一枚のハガキ』新藤兼人監督
敗戦国の日本と国民を、実際に当時を生きてきた映画監督によるこの映画は重い。同時に、長年にわたり沢山の映画で、人に迫ってきた鋭さは健在だった。

ミスター・ノーバディ』ジャコ・ヴァン・ドルマル監督
監督の『トト・ザ・ヒーロー』と、同様にこの作品も溢れるほどのイマジネーションの洪水。118歳の老人が語る、いつくもの枝にわかれた違った自分の人生のきらめく数々が素晴らしい。

『エッセンシャル・キリング』イエジー・スコリモフスキ監督
要素を削ぎ落とし尽くすことで表現できた、この監督らしい特異な戦争映画。純粋にダイヤモンドのようにかたく、美しい映画に感嘆する。

ブラックスワン』ダーレン・アロノフスキー監督
ナタリー・ポートマンの女優としての奇跡的なタイミングでつくられた映画。ひたすら、ホラー的に恐い映画だった。

アリス・クリードの失踪』J・ブレイクソン監督
映画の導入で確信する、イギリスから出てきた新人監督の才能。そんな映画に出会えた歓びを感じながら、最後まで面白さが持続した。