大阪途中下車、通天閣のお膝元で2人飲み(年末年始特集①)

師走のバタバタから解放されて、和歌山への帰省の途中大阪に立ち寄り、散髪をしてさっぱりとしてから一杯やることにした。四国に住む飲み友だちのK西さんと秋に東京で一緒に飲んだばかりだが、大阪でもまた飲めることになった。

↑新世界国際劇場は、通天閣の近くにあり雰囲気のある映画館だ。1階で洋画、地下で邦画のポルノ映画専門。どちらでもいいが、一度、ここで映画を観てから『平野屋』で飲むパターンをしてみたい。

帰省客で混雑する東京駅、新大阪から環状線新今宮、ジャンジャン横町、通天閣界隈まで来ると人が多いながらどこかのんびりとしたムードを感じる。串揚げ屋に並ぶ行列や昼間から営業している飲み屋から赤ら顔で出てくるおじさんたちを見ると、すっかり休日モードになっている。
ジャンジャン横町のはずれに散髪屋があるのを調べていたが、どうも店構えが安っぽい。どうせなら、昔風の佇まいの残る床屋に入ってみたいと欲が出て、通天閣のぐるりを散策してみたがよさそうな床屋を見つけられなかった。チィープな感じもまた、この土地の風情かもと思い直して、もとのジャンジャン横町に戻り「朝日理容」にはいった。ちょうど客が途切れていたのか、初老のおやっさんがすぐさま椅子に導いて「丸刈りの一番短いの?」と、ひと言。「それで、たのんます」こちらの反応も端的に早く、バリカンひとつで仕上がる頭の方もすぐに終わった。ただ、2年ぶりくらいでしてもらう理髪店のシェービングが丁寧で、うっとりとなった。料金の1,100円は、とにかく安いし気持ちもよかった。

↑地下鉄の動物前方向からジャンジャン横丁一番奥まったところにある『朝日理容』このすぐ先に『平野屋』がある。肌を引っ張り、なで上げて剃る床屋のおっちゃんのカミソリの技にうっとり。

↑さっぱり散髪の後に、ゆっくり銭湯タイム。旅先のひとっ風呂は、本当にいいな。身体も、こころも酒を飲む体勢になってくるのが面白い。

↑さて、半年ぶりの新世界『平野屋』だ。ひとり飲みブルースの2012年スタンダードに勝手に選んでますよ。

K西さんの到着までまだ、たっぷりと時間があるので、通天閣の足元の銭湯に入りゆっくりと暖まった。この銭湯には、露天風呂があり、湯船から見上げると通天閣が頭上にあるのだ。
半年ぶりに訪れる「平野屋」で、先に飲み始めたがすぐにK西さんがやって来た。しめさば、ぶりにまぐろのお造り、子持ちイカの酢味噌、やっぱりここは生ものの充実ぶりがうれしい。この店の客の大半は、ひとり飲みで静かだが、ふたり飲みの僕たちが目立つぐらいにハイペースで飲み食べしてしまった。にしん、カレイ、イカなどの煮付けの味も素晴らしく、こんな旨いつまみがあるのだから飲まないではいられない。

↑久しぶりで少し緊張していたのか、すんなりと「生ずし」の言葉が出て来なくて「しめさば」と東京風に言ってしまった。

↑ぶり刺身のこの盛りの良さを見よ。今日は、ふたり飲みだから品数を全然気にしないでどんどんつまみをたのんだ。

↑湯豆腐もほぼ一丁サイズ。薬味たっぷりもうれしいが、豆腐が本当に旨いんだ。

↑僕は燗酒で、K西さんは麦焼酎を炭酸割りでぐいぐいやっている。

イカ好きのK西さんは絶対に食べると思っていた、たっぷりなイカのお造り。

↑まぐろもさけては通れないし、子持ちヤリイカからし酢みそがいい味付けでたっぷりかけてくれる。

千枚漬けも関西ならではのつまみだろうな。

↑そして、とうとう煮ものに手を出す。最初は、にしんから。

↑この身の厚いカレイもたまらない。黒々としてない関西系の味付け煮汁に、大阪の味がした。

イカがどうして冷めてもこんなにふっくらとしてるのか、不思議でたまらない。

↑ちょっと、恥ずかしいくらいに食べてしまった。もちろん、飲む酒の量も。

ねばりにねばって飲み食いして店を出てもまだ、陽が高い。ぶらぶら歩いて、天王寺に向かった。通りが騒がしいと思ったら、この年の瀬に8棟全焼の大きな火事が西成の立て込んだ地域であったようだ。通り過ぎるだけでなくこうして、街中に漂ってみると大阪は都会だなと実感する。下町であるこの地域のごちゃごちゃした部分と新開発地域のばかでかい建物とが隣り合っている。
向かっているのが、天王寺駅前の再開発地域に復活再開店した老舗の居酒屋『明治屋』だ。2年前に来てみたが、すでに再開発の波に飲まれ閉店した後だった。大きなビルのなかに、ひっそりとしながらも堂々とした店構があった。以前の店をできる限りそのまま移築したように気を使った店には、年配の酒飲み達でにぎわっていた。タイミングよくカウンターに座れ、年期の入った燗つけ機に升で酒を注いでいるのが若い女性だった。店も代替わりして、頑張ってのれんを守っているのが伝わって来る。平野屋でしこたま飲んでいたので気も緩んでいたのだろう、断りも入れず料理の写真を撮ったら、店の女性にキツい感じでたしなめられた。

↑入り口だけだと昔の商店街の一角かなと見間違いそうだが、人で溢れてる再開発のでっかい建物の中の『明治屋

店内にレンズを向けた訳でなく、自分の飲むお銚子と生ずしの皿を撮っただけなのだが、許してもらえないのだから仕方がない。酒場で、カメラを持ち出すのをこちらも無粋とわかってはいる。ウナギのタレの味付けのような独特のぶり照り焼きは、覚えているがどうもその後の記憶があやふやで、写真がないから記憶の糸がたぐれない。こちらには、こちらの楽しみ方があるのだから、食べたつまみの写真ぐらい撮らせてほしいと思ってしまうのだが、もったいつけなくてもいいじゃないと喉まで出かかった言葉を、酒と一緒にぐいと飲み込んだ。
その後、恐ろしいことにこのふたりは、まだ飲み足りないのか次の店、京橋・京屋本店に行った。この店も以前に夏の帰省の時に噂を聞きつけ立ち寄ったのだが、ちょうどお盆ということでお休みだった。

↑大阪の飲み屋らしい京橋『京屋本店』今度は、飲みはじめに立ち寄ります。

↑牛スジは、醤油味でもどて焼きなのだろうか? 濃い味付けは、酒のあてにはなる。

↑おでんとは、別物の味付け“関東炊き”。しっかりした味付けで、十分に煮込まれたなつかしい関西の味。

再来した京屋本店には、食べに食べてしこたま飲んだ後だけにちゃんとお店の実力を見極める状態ではなかった。時間的にそんなに遅くなかったと思ったが、名物のお寿司も終わっていた。牛スジのどて焼きと関東炊きの味は、かすかに覚えている。もう、どうにも止まらなくなった泥酔のふたりは、以前飲んだ並びの店『丸徳』にも入ろうとしたが、あいにく満員で入店できなかった。今から思えば、ここら辺でやめておいて本当によかったけれど、その日は、実家のある和歌山までの道中が途方もなく長かった。

↑大阪で飲むと、何かに取りつかれたような暴飲暴食になるのは、やっぱり、食い倒れの街だからか。丸徳は、満員で入れなくて本当によかった。