焼きトン『高木』で、かつての仕事仲間と飲む牛乳割り焼酎


デザイン事務所に在籍する前、長く仕事をしていた出版社が、1年ほど前に新宿から北区滝野川に移転した。一貫した経費節減で人数は減りながらも、一緒に仕事をした編集者が数人いるので遊びに行くよと引っ越し当時、話していた。引っ越し先の住所を確認してみると、驚いたことに西巣鴨から明治通沿いの焼きトン『高木』の並びだった。この店は、15年前に結婚して荒川区に住むようになり、近隣の老舗の居酒屋を飲み歩くことに興味を持った頃、何度か訪れていたからだ。
焼酎の牛乳割りの飲み方も珍しかったし、初体験の味がおぼろげながら飲みやすさと後からかなり酔いがまわった思い出がある。さぞかし、引っ越して行った皆は、この店で飲んでいるだろうと思っていた。懐かしい『高木』に、行きたいと思ってはいたがデザイン事務所の在職中は、なかなか行くタイミングを持てないままだった。

明治通り沿いにある、焼きトン『高木』は風格ある店構えだ。魅力的で、つい入りたくなると思うのは、古き居酒屋ファンだけなのか。

休職の状態になった9月に、長くお世話になったこの出版社に挨拶がてらに行ったが、その時は用事を優先して午前中に行き、かつて一緒に仕事した編集長ととげ抜き地蔵の定食屋で昼ご飯を食べる事になった。だれも、まだ焼きトン『高木』に行ったことないままで、興味すら持ってないようだった。近々、必ず飲みに来るからと約束して別れたが、その編集長とは、別の会社に移った編集者と共に神保町で飲むことになり『高木』に行くタイミングをまた失っていた。
しかし、こちらは暇なもんだから、相手の忙しい雑誌の校了日の後を見計らって連絡してみると、今週金曜日にはのんびりしてるとのことなので、飲みに行くことになった。自宅から、都電でもバスでも乗り換え無しの1本で行けるから、気楽だ。バスを降り、携帯に連絡すると編集長がやって来て2人で店に入った。
編集長は、先日まで原因不明の激しい下痢に悩まされたようで、ようやく治ったそうだ。もう大丈夫と言いつつ、ビールをちびちび飲んでいる。シロ、レバ、ネギ、ししとうをタレ焼きでたのみ、さて、久しぶりの焼酎の牛乳割りを飲んだ。おぉ、これこれ、焼酎をそれなりに入れないと酒だと思えないくらい、さっぱりで、飲みやすい。だからこそ、後で酔いがまわってくるのだろう。ビールコップのサイズのものにたっぷり焼酎を入れてくれるので、いくら牛乳で割ろうが3杯を規定量とするべきだろう。編集長は、牛乳割りに興味を示して味見もするが、自分でたのもうとはしない。

↑最初にトマトを所望した編集長は、不調だったお腹をいたわったから?

↑これが、牛乳セットだ。焼酎、小さい牛乳瓶と2つを割りいれる冷やしたコップ。

↑焼酎が少ないとお酒に思えない味なので、思い切ってハーフ&ハーフで。

不思議なことにこの牛乳割りが、焼きトンにしっかりあう。魚の刺身を食べながら、これを飲もうとは思わないが、肉や野菜なら問題はないどころか食べたり飲んだりがいい調子にどんどん進む。
2杯目を飲みはじめて、今日はこれでやめておこうかなと思っていたら、後から同じ編集部の2人がやって来た。怪訝な顔で牛乳割りを見た2人だが、勧められるままに飲みでみることにしたら、何の抵抗もなくクイクイ飲んでいる。かつて編集部や会社にいた変人奇人の話題になり、言い古された話だったが、久しぶりなこともあって楽しく、盛り上がった。

↑ちょっとこれはないだろう、黒こげのレバ。気を入れて、ちゃんと焼いてくださいよ。おじさん達で、店内が込み合っていたが、それにしてもこのまま出してくるのは、おおざっぱすぎない?

↑この煮込みは、しっかりと煮込まれていて旨かった。薬味は、玉葱のみじん切りをお好みで。

惜しむべきは、焼きトンを勘弁してほしいぐらいに黒こげにされてしまった。久しぶりに来て、文句を言いたくはないが、ひとこと言っていいほどの黒こげじゃない。焼物は、味以前の問題だったが、よーく煮込まれてたっぷりと煮汁を吸い込んで原型をとどめないほどのシロモツの煮込みは、旨かった。味噌つけての生カブやピクルスのようにあまり塩味がキツくないお新香も良かった。

↑果物のように美味しい、生カブ。味噌をつけるとほんのり甘みさえ感じる。

↑塩焼きも悪くはなかったが、やっぱり中には少しこげすぎの串もあった。

↑お新香は、古漬けっぽく酸っぱいのだが塩味が強くないのでピクルスのようだった。

↑若いO井クンは、夕べ飲み行って家に帰りそびれ、そのまま朝まで飲んだらしい。それでも、牛乳割りを旨いと3セット飲みきっていた。そろそろ帰りたがっている編集長も、あきれ顔だったなぁ。
店を出て、もうこの後仕事はしないだろうが3人は会社に戻ったので、ぽつぽつ降り始めた雨の中をとげ抜き地蔵の方へ歩き、庚申塚駅で都電に乗った。雨粒が、窓を被う電車に揺られていたら案の定、酔いがしっかりまわって来た。牛乳割りを、あなどってはいけない。

↑都電は、結構揺れる。雨が本降りになり、外の景色も見えずに揺られて酔いがしっかりまわった。