十条・斉藤酒場で、誕生日飲みの微妙

自分の繰り返し重ねてきた誕生日の数にくらくらして、嬉しいとか嫌だとかの感覚もだんだん麻痺して来た。年を重ねる事を、くよくよ考えても若返らないので、そこは、単純に誕生日おめでとうでいいのだろう。飲み友達のマハロ・I藤さんと十条・斉藤酒場へ行きましょうと約束した金曜日が、ちょうどその日だった。

↑この暖簾のかかる年月を思うと、もちろん足下にもおよばない。
あけ放たれた入り口や窓から通り抜ける風がここち良い、昭和そのものの風情の斉藤酒場が好きなのだが、ここまで蒸し暑く盛夏と見まがう梅雨の終わりの頃なので、エアコンが入っていた。ひっきりなしにお客が押しかけ、飲んで食べてワイワイやっている間を行ったり来たりの立ち働いてる人にとっては、エアコンも入れなければやっていけないのだろう。いつも元気でちゃきちゃきのおかみさんも、今日は、動きがどうも心許ないのが心配だ。

↑飲み友達との誕生日乾杯も、なかなか、よいものだ。

↑I藤さんのリクエストで里芋の煮物から。地味にはじまる、おじさんの誕生日祝いだ。

なには、ともあれ私たちにはもったいないくらいのお店の真ん中に席を構えることができ、正面の壁にかかるメニューも二人して一望できる好位置だ。いつもは、軽く瓶ビールから始めるところを、夏気分の生ビールで誕生日の乾杯。
中央のいい席と思いきや、客もお店の人もひっきりなしに通る交差点の様な場所で、通る人のからだが毎回ふれるので落ち着かない。このふれあう感じもまた、古き良き時代の味とでもいえばよいだろうか。ひや酒を飲み始めた頃には、斉藤酒場の空気にすっかりなじみ始め、程良い酔い加減とおしゃべりにいい気分になっていた。

↑冷や酒は、冷たくしたのでなく、常温が美味しいと思う。

↑さてさて、生ものは、たことシメサバ。

↑鰺の刺身。

↑まぐろ刺身。口のなかで、とろりととろけるこの旨さよ。
昔よく行った西荻窪・戎の酒類の掟『焼酎3杯、日本酒5杯まで』が、いつのまにか一軒目のお店で飲む自分の酒飲みのルールとして身に染み着いている。居心地よくて、つまみも旨いとついつい杯も重ねて、気がつくと規定の5杯なっていた。
もう一杯が、心残りだがここで、さっと席を立つのも酒飲みの粋だ。もう一杯は、いいんじゃないのと目で訴えてるI藤さんだが、こちらの頑固さもお見通しで不服を口に出さずにちゃんとつき合ってくれた。

↑さばの味噌煮とオニオンスライス。おかみさんが「煮汁をつけてタマネギ食べなさいよ、美味しいから」と、教えてくれた。

↑キュウリ、もろ味噌。

↑カレイの煮付け。

↑カレイの裏の身。旨いものに酒が止まらない。

↑とどめに、ポテトサラダ。

もう一軒、斉藤酒場から商店街に向かってすぐの、地ビールの飲める店「風来坊」へ電車の最終を気にしながら行くことにした。雑誌「東京人」の酒場特集に新しくできた店として載っていた。
入ってみると、生ビールが一種類、あとは瓶の日本の地ビールが売りのようだがあまりたくさんの種類があるわけでなかった。1杯2杯しか飲まないのだから、それでもいいが、店の人の説明を聞いてどうも飲みたいビールを決めかねた。おっさんの酔っぱらいの厚かましさで「説明がわかりづらいね」と、つい口をついて出てしまったが、飲んでみると強めの苦みがきいた生ビールも地黒ビールの焦げ味も、結構、旨かった。

↑サッポロの生ビール。苦みが強くて、旨いとI藤さん。

地ビールの瓶ビールもお店の人が、流儀にのっとって注いでくれる。
店内に、映画のスティール写真を数多く飾ってあって映画好きのこちらの心もくすぐったが、時間もあまりなくビール話題に終始した。
で、誕生日飲みはどうかというと、おじさんの二人連れに取ってはいつもと変わらない、楽しい二人飲みだった。

↑斉藤酒場の昭和の空間。名残惜しく、もちろん、また、飲みに来たくなる。