GW前半、大阪・天王寺編

ふるさとの和歌山と東京の通過点でしかなった大阪だが、長年東京での飲み友達のK西さんが関西に移住したことで、何度か大阪で飲む機会があった。今回は、お見舞いのための帰省で、4月から徳島にいるK西さんと会ったり飲んだりする時間もとれなかった。和歌山で3日目の早朝、同行のかみさんは、自分の参加しているコーラスの練習が午後からあるため早々に東京への帰路についた。こちらも、午前中に出て、お昼から少し大阪・天王寺界隈を楽しむこにした。

↑大阪に対して、あらためて目を向けると東京との違いが見えて来て楽しい。勝手が違うのも、旅の楽しみ。

↑公園から見える通天閣の眺めも、なかなかいい。
時々、雨のぱらつくあいにくの天気だったが、天王寺駅から新世界まで天王寺公園を散歩することにして、ふと、動物園に足が向いたのがいけなかった。子供の頃から2、3回は行った事があると思うがほとんど動物園の記憶もなく、かつて犬猫や動物に可愛いといったような気持ちを持った事もなく、動物であっても檻に入れられ自由を奪われている状態にやるせない気分がどうしても先にたってしまう。霊長類は、人間に近いだけに見ていて気分も落ち込んでだ。それでも、像やカバやキリンは実物の迫力と大きさでわくわくさせてくれた。

↑象は、大きくて動作はゆっくりだが迫力満点。

↑キリンは、長くてのんびりでいい。

天王寺動物園、半分楽しんだが、半分は気分が落ち込んだ。

↑昔ながらの映画館は、その雰囲気がいいけど、椅子も画面も見にくいだろうな。充分承知で、時間が許せば観る価値はあるだろう。
公園内からも通天閣が望める、やっぱり大阪はなんだかおもろい。新世界のほうへ、一歩出るとそこは怒濤の繁華街であらゆるところに人が溢れかえってる。動物園以上にアニマルな世界で、こちらは見ていて笑えてくる。
通天閣のまさに足下の銭湯で、一汗流して目指すは新世界『平野屋』、K西さんとも何度か来ている立ち飲みだ。渋いおっちゃんたちが、さっと来てアテを一、二品とり酒をくいくいやり、勘定してさっとでて行く。エル字型のカウンターのみで、奥にはお刺身のガラスケース、入り口の方には煮もの関係のケース、入ってきた人のほとんどが今日のアテはなにがあるかちゃんと奥まで覗いて真剣に吟味している。

↑長い行列にひるんで、まだ、展望台に昇った事がない通天閣

↑本当に通天閣の足下の銭湯。『ホモ行為禁止』の看板はいまだ、水風呂の壁に貼られている。

↑全国のベスト立ち飲みに堂々入選間違いなし。ひとり飲みブルースのベストワン立ち飲み店だ。

簡素な店構え、刺身類の鮮度のよさと盛りのよさ、値段の安さに加えてなによりその品ぞろえの多さは立ち飲みの領域を超えている。フカ酢味噌、あじ刺しで、大瓶のビールをぐいとやる。散歩と風呂上がり後で、それも、午後の3時前だものからだと心に沁みわたる。
注意しなければいけないのは、新大阪5時発の指定席の新幹線に乗り遅れないこと。それと、千べろ探偵団と亡き中島らもさんがいみじくも言った酒飲みの聖地・新世界で飲んでることを肝に銘じておくこと。東京では考えられないようなどんな事態になるともわからない。なんてことない普通の酒飲みのおっちゃんたちが、このカウンターにとりついて飲んでいるが、よくよく観察してみるとその顔つきから東京とは少しばかり雰囲気が違う。食い物の写真なんか撮っていると、いつ何時、文句つけられるかもしれない。

↑何げなく、一皿、一皿の盛りが素晴らしい。食い倒れの街だもの味に間違いはない。

↑目の前に季節もののタケノコがあって、手が出さない訳には行かなかった。

↑煮魚も食べない訳にはいかないって。香味用の生姜すら、一緒に食べる事のできる煮方をしていた。

左隣の肩が触れるほどのおっちゃん、尋常な日焼けではない。路上販売だろうか、手も腕も首筋も黒人と見まがうほどの黒さで銀のごつい指輪だけが、キラリと光ってる。最初に右隣に来た眼光鋭い初老のおっさんが食べてるクジラの刺身がうまそうで、左の黒いおっさんも間髪入れず来るなりクジラを食べてる。ものすごく、クジラ刺を食べたくなった。季節の若筍煮やいわしの煮付などに食べ飲み進む中で、まだ、クジラ刺はいけるか。でも、両側のごついおっちゃんに真似してると思われ、それをきっかけに何を言われるかわかったもでない。だが、どうにも我慢できなかった。大ぶりに切った赤身の切り身は口の中でとろけ、味わっていると突然
「それりゃ、うまいやろ。鮮度がええからな」
黒いおっちゃんが、低い声で唸るように言ってきた。
「ほんま、旨いです」それしか言えんかったが、それだけですんだ。そしたら、そのおっちゃん帰り際に「お先ぃ」と一言残してさっと行ってしまいよった。
ほっとしたような、その鮮やかな飲みの身のこなしにほれぼれしつつ、大瓶と常温の酒4杯でかなりいい気分になって店を出た。ジャンジャン横町でもう一杯どて焼きつまみながら飲みたくなるのをぐっとこらえつつ地下鉄・御堂筋線の駅に漂いながら向かって行った。

↑問題のクジラ刺。

↑大瓶、酒4杯。アジ刺、フカ酢みそ、若竹煮、いわし煮、クジラ刺身、ハモ皮。しめて三千百円なり。これは、安い。

↑4時頃には、もう、ひっきりなしに客が押し掛ける。ただし、串揚屋ほどには、並ばない大人のお店。

↑ドテ焼き食べなかった反動で、新幹線乗車前に買ってしまった。棒さば寿司と日本酒は、家に帰ってからの召し上がりでした。ビールとハイボールを記憶のないうつらうつら状態で飲み、はっと気づくと東京駅に到着していた。飲みすぎやで、まったく。