地震の影響? カブトの危機


↑公園でコブシの花が、咲いて晴れ上がった青空に白が映えていた。

↑自宅マンションから道一本向こうが、計画停電の地域だった。今の所、免れているが、停電の生活はかなり不便だろうな。

原発建設の反対運動ドキュメント映画が、上映中止になっていた。くすぶり続ける福島原発に日本全国、声に出せない恐怖を感じていて、刺激しないためとはいえ情報を出さないのが一番問題だと思うのだが。
連休初日の土曜日、渋谷の人出はそれほどでもないと思ったが、午後になるとだんだんと人が増え始めていた。電車も普段どおり走っているので相変わらずの状態になるのだろう。映画を観てしまえば渋谷には用がないので、足早に新宿に向かう。人で混雑して歩きにくい新宿駅周辺を抜け、思い出横丁入り口立つと、どうやら倒壊もなくいつものようにお店も営業してるようだ。中の通りをどんどん行くと、よかった「カブト」もちゃんとやっている。右側奥は、うまっているが焼き台前正面でちょうど3人がお勘定を済ませ先に待っていたおじさんと連れのかみさん共々、すぐに座れた。「カブト」が無事なので、最初のビールは乾杯したいところだが、そうもいくまい。

↑やっていて、ホッとしたが・・・
焼いているG味さんの顔が曇りがちだが、街の人出は戻ってきているのでお客さんの入りが悪いようでもなさそうだ。どうやら、もっと根本的な事だった。レバ串は、5時前だからもうないのは当たり前だが、他の焼くうなぎも今出てるバットにあるだけだそうだ。せいぜい6時ぐらいまでしかもたないと言っている。堅エリ(うなぎの首の骨があるところ、圧力鍋で蒸したものと生のまま焼き上げるのと2種類ある。もちろん、生の方がうまいが骨があって食べづらい)も、僕たちの分で終わりになった。

↑とりあえずレバ串抜きで食べれたが、この次に来たらどうだろうか。
古い建物の心配だけしていたが、大はずれで、今回の地震で東日本地域のうなぎの消費が極端に減ってしまったのだ。もちろん、他の食品と同様に流通の滞りの影響もあるようだが「カブト」にうなぎが回ってこなくなったのだ。通常の蒲焼きが、どんどん売れないとその他の部位をメインに串焼きで出してるのだから、入荷がなくなれば全く商売にはならない。この1週間は、営業を続けたが来週はたぶん各日で店を開ける感じになってしまうのではと、いつも元気なG味さんが力なく言っている。
以前にこんな状態になったことあるのですかと聞いたら、石油ショックの時にもうなぎが入ってこなくなったなと言っていた。70年代のトイレットペーパーを買いに主婦がスーパーに殺到した時だ。
まさかの話に、こちらは呆然として焼酎をグビリと飲むしかない。ぼやぼやしてたら「マル」も終わってしまうというので、急いで「丸塩」2本たのむのがせいぜいだった。ヒレ2・エリ2・レバ1・肝1・蒲1の7本セットはもう幻になりそうな雰囲気だ。
蒲は、もう少し残っているようなので、かみさんは蒲塩も食べたそうにしてる。立って待ってる人もいるので、少しでも多くの人の口に入ればと、もう帰ることにした。

↑いつものように「ううん、丸塩は旨い」と気楽に言ってられない。でも、客のこちらはしっかり味わうくらいしかできない。
「今生の別れになるかもね」
縁起でもないこと言わないでくださいとG味さんに言い返すが、寂しい感じがやるせない。日本全体が萎縮してしまっては、明るい未来はないのだからと夕闇迫る新宿の空を見上げ、ため息をついた。