銀座から地元町屋、下町のもつ焼き『小林』

movie_kid+blues2010-12-10


金曜日、8時半仕事が終わり、銀座に向かった。銀座で飲もうと思っている訳でなく明日観る映画の座席と取りに行くのだ。最近はシネコンばかりでなく映画館も座席指定の方式が多い。この時期、一人素面で夜の銀座は嫌だなと思っていたら、全然、普段と変わりない。クリスマス目前の雰囲気もほとんどなく、全体にしらけたムードは、景気の悪さの現れだろうか。

↑週の真ん中に、唯一、忘年会に誘われていた。ただ、そんなにタイミングのよくその日の早い時間で出られる訳がない。『アコースティックフォークバープレイアーズ』というお店で、ギター弾き放題、歌い放題と魅力的な忘年会。簡単に不参加と言えない付き合いでもあるので、前半の旨いもの食べるお店には、間に合わず後半になんとか駆けつけた。ただ、新しい弦に張り替えていた左利き用のマイ・ギターを事務所に持ち込むのをためらってしまったため、人の歌を聞くのみ、歌え歌えと言われても弾けない歌えないでストレス溜まりまくり、とほほな気分だった。

↑時間的にみんな店なんかに入ってしまったのかな。若い女性も見当たらず、アベックも目につかないし、全体に街に華やかさがなかった。

腹が減ってるから銀座か有楽町で飲んじゃおうかなとも思ったけれど、今週、雑誌『東京人』1月号の特集◎東の横丁うまい店、を読んだので結構刺激されていた。単なる紹介だけでなく横丁といい飲み屋の雰囲気が誌面に出ていた。
普段は、DVDレンタルに立ち寄る地下鉄千代田線と京成線、都電の町屋だが、地元再発見で飲みに行こうと決めていたのでそのまま混んだ地下鉄で町屋に向かった。

↑表通りから、少し入ったところで、こじんまりした飲み屋が数件かたまった中の一軒。

↑なんとか入店できたものの、恨めしく煮込み鍋を見つめながらビールをぐびり。
15年以上になるだろうか、荒川区に越して来て散策などしている時に一度食べに来た事のある、もつ焼き『小林』。飲んだ後のしめに煮込み汁のラーメンが、珍しいのか雑誌『散歩の達人』で紹介されていた。
かすかな記憶で探し当て店に入ったら「煮込みがもうないのでごめんなさい」とつれない返事。この時間で他に行く店のあてもないし空腹の絶頂で、焼きだけでもいいからだめですか? と聞いたら、ハツ、タン、シロだけしかないけれど、と言うので充分ですよと、5本セットの焼き物を頼んだ。座った席が、鍋の前で幾分肉も残ってるので、それでいいのでもらえませんかと言うとまだ煮えていないので、と、断られる。
ビールも飲んで、焼き物も出て来た。ハツ、タンは塩にしてもらいシロのみタレ焼きにしてもらったら、このシロがなかなかいい。

↑お腹に何か入ると何だかホッとした。

↑酎ハイは、甘いのではなく正真正銘の炭酸割。たっぷりで、かつ焼酎がかなり濃い、嬉しいストロングタイプ。2杯で、充分酔がまわって来た。
ビールは、飲んでしまい焼き物も残っているから酎ハイを頼んだ。
もともと夫婦でやっている小さいお店、何だか若返ってるのが変だと思ったら、おやじの顔はかすかな記憶と違和感ないので、息子夫婦に代替わりしているようだ。

↑粘り勝ちかな。でも、あんまり煮込まれてはいなかったのだが、それでもこの味わいは素敵な下町の味覚だ。

恨めしそうに鍋を見ていたのだろうか、奥さんが種類はかたよりますがと煮込み5本、出してくれた。焼きも煮込みも5本がセットらしい。有り難く、お店の看板メニューを頬張った。赤みそ系ではないが、見かけも味も濃い煮詰まった煮汁の味が、食べた瞬間、ああ、下町の味だ。ここら辺は、もんじゃ焼きもあるがもつ焼き屋も多い。それも、持ち帰りやその場で子供が買い食いする焼き台だけのお店が商店街でも時々目についた。店の前で親子連れが頬張っていて、おやつ代わりにもつ焼きかと驚いたものだ。
その延長線上にあるような、懐かしい味がする。

↑みんなを見つめて来た煮込み鍋。店の一番いい場所に小振りながらでんと存在感があった。

お店に今来てるのは男女のカップル3組、男同士1組で、みんな若い人達だ。仕上げに煮込みのつけ汁つけ麺を旨そうに食べている。おじさんの巣窟、もつ焼き屋のイメージが、ここでもちょっと違う。かつてはそうだったかもしれないが、作る方も若くなり安くて旨くて、暖かい味を楽しみに来ている下町の風景があった。