昭和の斉藤酒場は、“花金”お疲れさまのふたり飲み

もう、絶版になっているだろうか? せんべろ本。亡くなった、らもさんとその仲間が千円もあれば酔っぱらえるGoodなお店を全国(主に大阪と東京)飲み歩いてレポートした幻の名著。
その本を片手にたどり着いたのが十条・斉藤酒場だった。ここは、いまも昭和です。お店そのものが昭和の居酒屋。数少ないのみ友達、Iさんとまだブーム前の立ち飲みに目覚め始めた頃、立ち飲みと同じ値段でこんないい雰囲気で飲めるなんてと二人ではまってしまった。

↑読み始めると、今すぐにでも飲みに行きたくなる名著の一つ、かな。

↑カバーの写真と実際と違うのは、いつもお客さんで満杯になっていること。雰囲気は、写真通りやっぱり昭和そのもの。


↑のれんの写真撮っている間にも、どんどん客が入って行くので気が気ではない。

埼京線のJR十条駅ロータリーを商店街方向へ入ってすぐ、紺地に白く染め抜かれた『創業昭和三年 大衆 斉藤 酒場』のれん文字が、もの凄い吸引力を持っている。独特の自然木のテーブル、黒い札に白い文字で書かれたお品書きと驚きの値段。せんベロ本のカバーに堂々と使われた斉藤酒場の店内の写真、数ある飲み屋の中でもここを使いたかったアートディレクターの気持ちは痛いほどわかる。真冬以外は開け放たれた扉や窓から、いつもいい風が抜けて季節の移ろいが感じられる店も少ない。だから、Iさんとは季節の変わった頃合いでどちらからともなくそろそろ秋風が感じられたから、燗酒やりに行きますかと電車に乗って十条駅で待ち合わせる事になっている。

↑いやいや、お疲れ様。金曜日、労う相手のいる乾杯もまたいいものだ。

何時行っても、ご近所さんや仕事帰りのサラリーマン達でいっぱいの店内、すわれるかどうかいつもドキドキでのれんをくぐる。奥の角、隅っこにおばちゃんが手招きしてくれる、よかった。先客のお姉さんやらとなりのおじさんと膝付き合わせる格好で、滑り込めた。どうやら、前の本当に若い、どうみてもまだ20代の女性はひとり飲みらしい。なんと、豚カツつまみに燗酒飲んでいる。オス化する女子なんだろうか。もちろん、肉食系なのだがひとり静かに飲んでいる。対して、こっちはアジ、たこ刺にシメさばなんだが、今日は相手がいるから俄然おしゃべりに花が咲き、この夏の思い出なんぞをわーわー言って盛り上がった。

↑たこ、アジ刺。すぐにでも燗酒飲みたくなる導入のおつまみ。

↑ビール最初の一杯だけお互い注ぎあうが、後は接待ではないのだから手酌が基本。正味、一合徳利は何とも手に馴染む。日本酒は、時々、氷水で口を洗い流しながらが、飲み飽きなくて悪酔いをしない秘訣。

子持ち昆布は、ポン酢でした。数の子は、お正月を思い出す味だねと、二人で納得し合う。

↑シメサバは、避けては通れない。今日のは、やや酢の〆具合が強いかな。ハスきんぴらは、シャキシャキと食感がいい。

Iさんも含め、知り合いの何人かとこの店に10年くらい来ているが、ここの女将さんはいつの間にか僕だけ学生時代からの常連と決めつけていて
「最近は、ホントたまにしか来ないんだから、あなたはまだ斉藤大学卒業してないのだからちゃんと来ないとダメですよ」
なーんて、本気とも何ともわけわからん事を真顔で言われて戸惑っている。そんな姿をIさんは横で見ていて手を叩いて喜ぶ。まぁ、また来なさいよと言われてるのだから、悪い気はしない。

↑ポテトサラダは、てんこ盛り。さばの味噌煮とポテトサラダは、万人に、少なくとも酒飲みにはぜったい愛されている。

↑里芋煮たのにアスラパのゴマ和え。やさしい味なんです。

↑伝票にも昭和の香りが。計算してもらって、4,670円と聞くと驚いてしまう。
さて、こんだけ飲み食べて千円ではとてもおさまらないが、どう考えても普通の半分近い値段ですんでしまう。二人共々、飲んで食べて話して、斉藤酒場の空気に浸っておおいに満足。今夜は、もうちょこっと飲み足りないか(いつもだが)遠回りして新宿でハイボールでもと、最近、お気に入りのはしごコースに。
幸せの炭酸がはじけ、おっと、終電車が近くなって来た。

↑最後にもう一杯が飲みたくなると、新宿・思い出横丁『みのる』の角ハイボール